失い逝く壊れた歯車の中で (腐敗した大地に崩れた幻想を) 何時からでしょう(全てが色褪せたのは) 何時からでしょう(心満たされなくなったのは) それはきっと必然だったのでしょう(手を伸ばしても届かない願い) 包むほどにそれはもろく崩れ去り(叶うことすら儚く散り失せる幻想でした) La regione non permettono a Dio di intervenire.(その領 域に立ち入ることを神が許さない。)「これぐらい、かな?」放たれた魔法が敵を打ち上げ剣がそれを斬り伏せる。慣れた連携をアイコンタクト一つせずしてのけた二人は月の渓谷から見える満月を見上げ一息をついた。「流石に嫌になるよ」「…うん、そうだね」主語もなくうんざりした様子で見上げてくる大きな瞳に対するティナも疲労を隠せない様子で同意する。ここ最近、イミテーションが活発化してきている。特別強くなったり凶暴化したわけではないが、単体で行動していたはずのそれが異常なほど数が多く纏まって示し合わせたように襲ってくるようになったのだ。一歩歩けばイミテーション、右を向けばイミテーション、背後を見ればイミテーション、上を見ればイミテーション。兎に角あっちやこっちに現れる。とりあえずこう数が多くては話にならないと話し合った結果イミテーション駆除をすることになった。ペアは普段良く組んでいる者同士。最初のうちはオニオンナイトもティナも少しでも数を減らそうと頑張って戦っていたがそろそろ限界だった。カオス陣営の誰が考えた手かは知らないが、対なる神々の闘いが争いを増すばかりの中でそれは自覚させる暇すら与えずに着実に戦士達を追い詰め、その体力を削っていた。全くもって、巧妙と誉めざるを得ない。「みんな…大丈夫かな…?」「大丈夫なんじゃない?こうして僕達は生きてるし…僕の言うこと、信じられない?」「ううん、違うの」そうじゃなくて…と生意気な口調とは裏腹に刹那不安に頼りなく揺れた双眸にティナが静かに被りを振る。信じていないわけではない。誰よりもお互いにお互いを尊重し信頼している。それでも不安は消えないものだ。胸の前で手を緩く合わせきょろきょろとしていたティナの顔が強張った。そちらを見やったオニオンナイトも一瞬状況が飲み込めず思わずといった様子で目を丸くする。悪い予感ほどよく当たると言ったのは誰だっただろうか。目に映るのはイミテーションの大群。二人に油断はなかった。きちんと辺りに気を配り感覚を研ぎ澄ませていた。しかし極限まで体力の削られていた二人には最早敵の接近に気付けるだけの余裕がなかったのだ。自分達が思っていたよりも、追い詰められていた。回避しようにも間に合わない複数のイミテーションの姿にはっと息を詰め「…退屈だな」翻る、銀色。視界にそれが広がった瞬間一閃で敵が弾き飛ばされ追撃の斬撃に悲鳴を上げて倒れていく。それが一通り落ち着いたころ片翼を羽ばたかせて降り立ったのは、墜ちた英雄。唖然とするオニオンナイトと困惑するティナを一瞥した醒めた冷ややかな笑みを含んだ瞳がつまらなさそうに細められる。「まさかその程度、とはな」吐き出された息に密かに紡がれる甘くも冷たい声と言葉。その割には嘲笑いすら含まない声音は無機質に流れる音楽を聞いているよう。クラウドの仇敵である青年の出現に大きく二人は戸惑う。一方助けた側の青年ーセフィロスも戸惑いを隠せない二人を見やり自身の手を一瞬見下ろす。何故、助けてしまったのか。助けるつもりなど全くなかったのに。何故、助けてしまったのか。これはセフィロスが通した作戦であるのに。「ありがとう」澄んだ声が反響する。ゆっくりとそちらを見たセフィロスにオニオンナイトの肩に手を置いたティナが仄かな笑みを浮かべて御礼を口ずさむ。真剣な光と優しさが混同した瞳は心から感謝を宿して輝いている。何故助けたのかも分からないセフィロスに少女に続くようにして少年も頭を下げる。「礼を言われる筋合いはない」導いた、つもりもない。クラウドに絶望を贈ろうかと出向いた先で繰り広げられる死闘に興味が惹かれただけだ。何となく自分の作戦によって襲われ傷ついているのを見た所に想定外の量のイミテーションが二人に襲いかかったのが見えたから、それではこれからの死闘が面白くないと助けただけだ。退屈からか、単なる暇潰しか。それすらも判然としないが。「戦うか?」すらりと長刀を構えたセフィロスにオニオンナイトの空気が強張る。実力差が歴然としているのが分からないほどオニオンナイトは戦士として未熟なわけではない。あるいは互いにペアを組んでいなければ、五分には張り合えた自信がある。だが二人がかりだからこそ、分が悪いこともあるのだ。「やめとくよ。勝てない相手とは戦わない主義なんだ」「…逃げる、か」では娘はどうだ?静かに問い掛ける声にティナは首を振る。「貴方は…似てるから」ぽつり、落とされた言葉にオニオンナイトが訝しそうになるのに対し言われた本人であるセフィロスは納得した。似ているのは、その生き様。ただ選んだ道が違うだけ。そんな者同士が戦おうが得られるものは虚しさだけ。否、セフィロスを満たせる者などあれしかいないが。「…僕はあんたが分からない」じぃっと。セフィロスを冷静に見ていたオニオンナイトが口を開く。「カオス陣営にしたら、あんたは真っ向すぎる。僕達を放っておくことだって出来たのにあんたはそれをしなかった。カオスの理想に共感なんてしてないけど、それが一番都合が良いからそこにいるみたいに見える」ねぇ、と。目を閉じてオニオンナイトが試すように続きを口にする。「僕達の仲間にならない?クラウドとは少しギクシャクするかもしれないけど」「断る。私はカオスの軍勢だ」「それを辞めろって言ってるの」真意が読めず即答したセフィロスに迷い無く吐き出されたその一言で、何故誘われたのか、助けたのか疑問が解けた。ああ、そうかと薄く薄く唇を歪めた。似ていないからこそ重なった光景がある。それは取り戻せない夢物語。「私がコスモスに従うことも仲間になることもない。コスモスの言葉は綺麗事だ」「でも」だったらどうして?それならどうして助けてくれたの?と首を傾けたティナにセフィロスが冷笑する。そこに隠された真実を読み取れる人はきっといない。「気まぐれだ。今のクラウドに絶望を与えた所で意味がないからな」仲間を殺めたとて牙は研がれない。無意味にくだらない戦いを繰り広げるだけだ。それをじっとオニオンナイトは聞いていた。始終冷たい笑みを滲ませる青年の言葉を。悲しい青年だ。悲しい、寂しい人だ。オニオンナイトは目を伏せる。さっきの質問に返された答えで分かった。元は光の道を進み自らの願いの為に闇を選んだ彼ーセフィロスと相容れることはない。この先もずっと続く道の中で対立し続ける。ティナはそれがどうしてなのかに気付いていない。気付かなくていい、こんなこと。たった一つの目的の為に友も世界も切り捨てた青年を理解して仲間にする。それはIo amo il mondo che io posso uscire,(それはきっと壊れ果 てた世界を愛するということ、)何時か世界が滅びる日がきても、世界中の人々がこの惑星を見捨てようとも唯一人、この世界を愛し続けようーそう言い切れなくなった青年と今なら言えるみんなに巡り会うために生まれてきたんだ…ってーそう言い切れる少年少女とのそれは、泡沫の夢にも似た…出逢いVedo un sogno mi auguro la sua magia(ずっと夢を見ていら れる魔法があればいいのに)それが神殺し、神竜が望んだ歪みであり世界だと、まだ誰も知らなかった。 |
最初の願いは、誰もが同じの筈だった。
黒姫ミナ様から相互記念でいただきましたー!
「成り行きで少年&少女を助ける事になってしまう英雄・シリアスで小説」という…。
だああとんでもなくむつかしいリクにも関わらず、期待以上のものを書き上げて下さってー!!
英雄を仲間に誘ってくれて本当にありがとうオニオン…と感涙し。
本質を見抜くティナの鋭さにハっとさせられ。…うう、うっかり英雄仲間話読みたいとか抜かしてすみませ…orz
とりあえず小躍りしながら何回も読み返しております。
黒姫ミナ様、本当にありがとうございました!!