Luring to Insanity
意識が覚醒した時、 最初に感じたのは喪失感。
・・・暗い・・・
何処だ・・・ここは・・・?
「目が醒めたか?」
「・・・クラ、ウド」
・・・そうだ、確か俺はクラウドと二人で話をしていて。 ・・・それから、どうしたんだった?
頭が、ハッキリしない。 全身が気怠い。 ベッドの上にいるらしいが、なにやらジメジメしていて濡れている。
気持ち悪い・・・。
不快感しか生じない状況、寝転んだ状態のまま右手で前髪を掻き上げる。
クラウドが傍らでじっと見詰めていた。
「・・・何だ?ジロジロ見るな」
「・・・ごめん、な」
自分を見下ろすその顔が陰る。 しかしその表情は、哀しくも笑っていた。
「・・・?クラウド?」
「こうするしかなかったんだ。じゃないとスコール、逃げるだろう?」
「・・・何を、言ってる?」
しかし起き上がろうとして気付いた、その違和感に。
感覚が・・・足の感覚が、ない。
「・・・・・!!!!!!」
恐る恐る、視界を下へと移す。
・・・無かった。
感覚どころか、脚そのものが。
「ッあ゙あ゙あああああ!!!??」
認識した途端に、とてつもない・・・とても言いようの無い劇痛が脳を打つ。
両脚の大腿部、その半ばから先が無くなっていた。
断面から赤に塗れた骨が僅かに覗き、その周りからは少量ながらまだ血が噴き出している。
シーツを濡らしていた液体の正体はこれだった。
「ッあ゙・・・ゥ、な、んでッ・・・!?」
どうして。
痛みに耐えながら、パニックに陥りそうな頭を必死で抑える。
「スコール」
ふわりと。 クラウドの手が伸びてきて、ゆっくり抱き締められた。
「スコール・・・愛してる」
「ッ・・・クラ、ウド」
愛してる? なら、どうして。
「どうして・・・こんな事」
「スコール、足が速いからな。・・・こうすればもう逃げられないだろ?」
見上げたクラウドの顔は、とても穏やかな笑みを浮かべていた。 後悔なんて微塵もない、これが正しい選択なのだと疑う余地もないというような。
狂気を孕んだ筈のその顔は、とても幸せそうで。
見ている俺の方が・・・なんだか滑稽に思える程に。
「ッ馬鹿か・・・アンタ」
「・・・スコール?」
・・・ああ、もういい。 麻痺しかかった頭に未だ脚は痛みを訴えてはいるが、それよりも。
・・・目の前のこの男が、哀れでならなかった。
そして、この男に対して似たような感情を抱いていた自分もまた。
「馬鹿、だ・・・」
自嘲するように、笑みが浮かぶ。
「・・・責任、とれよ」
淀みに澄んだ瞳を真っ直ぐに見据えてそう言えば、嬉しそうに細められた青が視界いっぱいに広がって・・・消えた。
END
|
墜ちるなら奈落まで付き合うわ、ダーリン。
BGM 『慟哭の花嫁』
by Hajime Sumeragi
こねこねこ様から相互記念でいただきましたー!
「クラ♀スコで痛めの裏話」…すみませんすみませんリク内容からしてキツいもんを!!
暗いもの趣味かつ性別転換スキーで申し訳ないです。でもってバッチリ期待に応えて下さって大感謝!
嬉しすぎてうっかりBGMまでつけちゃったんだぜ…(本館サイトの古いブツじゃないですかい)
クラウドは原作してからして病んでますからね…恋愛ノンストップになったらやりかねないなぁと。
でもって最終的に一人で後悔して泣いてそうなイメージがあります。女の子になってもきっとスコのが逞しいかと!
こねこねこ様、本当にありがとうございました!!