それは真っ赤な装丁の、分厚い一冊の本だった。
私の町にある古い商店街。アカシタ古書店という名のその店は、私のお気に 入りの場所だった。古い本の中には時折“ホンモノ”が紛れているからだ。霊 や魔術が大好きな集団である“オカルト研究会”のメンバーとして、興味をそ そられない筈がない。 そして私には少しだが、魔法の才覚があるのも知っている。先日、近所に住 んでいる可愛らしい女子高生に言われた。どうか力の使い方を間違えないで ね、と。 驚いたのがそのモデルばりの美人である彼女が、少し見えるだけの私にも分 かるほど素質に溢れた人だったことだ。今まで何故交流が無かったのだろう、 折角こんな近所に住んでいたのに−−と。今更後悔しても仕方ない。 どのみち私が彼女と逢うことは、多分二度とないのだから。
『ごめんなさい、メアリー』
思い出すのは、ほんの数時間前の出来事。
『わたし……あの人と、付き合ってるの』
がり、と思わず強く唇を噛みすぎて、血の味が広がった。不思議と痛みを感 じない。それを遙かに上回る怒りが、私の胸の奥を焦がしていたからだ。 親友だと思っていた。彼が好きだと、どうすればお近付きになれるかと日々 相談していた。そう、彼女は私の気持ちを知っていた筈なのだ。 それなのに――裏切った。あの人を攫っていった。
――赦せない。
思えば在日アメリカ人の自分は、彼の好みとは真逆。彼は黒髪で大人しそう で、自分より背が低くて、胸が小さめの女性がタイプだと聴いている。彼より 背が高くて金髪でそれなりの体型で−−とにかく積極的な私は、最初からお呼 びで無かったということか。 それでも、彼女が応援してくれたから――ここまで頑張ってこれたのに。あ の女は最悪の形で、友情を粉々に叩き壊してくれたのだ。 赦せない。許せるはずが、ない。
――このまま幸せになんて、させるものか。
導かれるように、私の手は一冊の本を手にしていた。赤いハードカバーの表 紙。ボロボロのページ。中にはびっしりと英語、そして魔法陣。 私は口角を吊り上げた。ああ見つけた。見つけた。こんな高度な魔術書がま さか本当に、こんな近所の古書店に眠っているなんて。しかも今自分が一番欲 しいものが、そこにある。 呪術ではないが、その中身は限りなく呪いに近い。これ一冊あれば、私はあ の裏切り者に永遠の苦しみを与えてやれるのだ。なんて素晴らしいことだろう か。
「ふふっ」
それを手に取り、何食わぬ顔で私はレジへと持っていく。いくらだろうと払 う。なんせもうお金なんて必要ない。 あの人を失った世界に、意味なんてないのだから。
「……楽しみだなあ。本当に、楽しみ」
その翌日。 JR××線、T駅ホームから、一人の女子大生が飛び込み――自殺した。
【誰かが】 負の連鎖を止めて・1 【必ず死ぬ】
1:魔女と呪いと名無しさん だれかたすけて
2:魔女と呪いと名無しさん え
3:魔女と呪いと名無しさん ちょっと待て スレタイが不穏すぎるぞ
4:魔女と呪いと名無しさん 釣りだろ
…釣りだよな?
5:魔女と呪いと名無しさん 釣りだろうが何だろうがまず話してくれないことにはどうにもならん >>1よ、コテハンとスペックをよろ
6:魔女と呪いと名無しさん 毎回思ったが大概>>5あたりに男前なまとめ役が来るよな
7:魔女と呪いと名無しさん >>6 じゃないと話が進まんからだろww
8:魔女と呪いと名無しさん 確かにwww
9:あお コテハンはこれで行くね 正直もうどうすればいいか分からないの ただ何かあったらオカ版にスレ立てしてみんなに相談するようにって言われて たから 私のチームのみんなが常連らしいの、コテハン聴いてきたからこれで誰か分か るといいんだけど
スペック上げるね 初めて書き込みだからやり方間違ってたらごめんなさい
・あお(私) 男子中学男子サッカー部女子マネージャーで一年生 天Mとはクラスも同じ
・天M 男子中学男子サッカー部キャプテン代理で一年生 MFでオカ版常連
・指揮者 男子中学男子サッカー部キャプテンで二年生。一時期天Mにキャプテンを預け てた MFでオカ版に時々来る
・騎士K 男子中学サッカー部のエースストライカー。一年生。天Mとは親友 FWでオカ版常連
10:魔女と呪いと名無しさん ちょ
11:魔女と呪いと名無しさん >>1が女の子だったあああ!って…え!?
12:魔女と呪いと名無しさん 天Mのとこのマネジだと!?
13:魔女と呪いと名無しさん まさかのマネジ降臨んんん!つかどうしたんだよまさか天M達に何かあったの か!?
14:魔女と呪いと名無しさん え、おまいらこいつら知ってるの?
15:魔女と呪いと名無しさん >>14 にわかだなお前 オカ版じゃ有名だぞ 怪奇事件を次々解決するキセキーズと天Mーズの愉快な仲間たちだ
16:魔女と呪いと名無しさん >>15 間違っちゃいないが何かおかしいwww
17:あお 話していい…?時間ないの このままじゃサッカー部の誰かが死んじゃうのよ!
18:魔女と呪いと名無しさん
19:魔女と呪いと名無しさん
20:魔女と呪いと名無しさん
21:魔女と呪いと名無しさん
22:魔女と呪いと名無しさん そうだった…スレタイ…
23:魔女と呪いと名無しさん ふざけてすまんかった とりあえず話してくれ、誰かが死ぬってどういうことなんだ
24:あお うん まず前提としてなんだけど、天Mはともかく指揮者キャプテンや騎士Kはかな り霊感が強いの 視る方はかなり視えるみたい…私は全然なんだけど
きっかけは、昨日天Mが校舎裏で女の子に呼び出されたことだった 腹立つっちゃ腹立つけど、最初は普通の告白かと思ったのよ あれであいつ……モテるし
25:魔女と呪いと名無しさん んだとおおおっ!? さすが天M!
26:魔女と呪いと名無しさん 普段ならリア充爆発しろコールだが天Mなら許す!
27:魔女と呪いと名無しさん つかその様子だと、用件は告白じゃなかったんだな?
28:あお >>27 そうなの 呼び出された天Mは…あ、相手は二年生で同じ委員会の女の先輩だったらしい んだけど 手紙を渡して言ったんだって
「今日家に帰るまで絶対中を見ないで。家に帰ったらすぐ見て、中に書いてあ ること実行して。でないと…死んじゃうから」
彼女すごく思い詰めたっていうか真っ青な顔してて 最後に
「ごめんなさい」
って謝ってきたらしいの
29:魔女と呪いと名無しさん なんか既に嫌な予感
30:魔女と呪いと名無しさん 奇遇だな 俺もだ
31:魔女と呪いと名無しさん なんか今のうちにトイレ行っといた方が良い気がしてきた…
32:魔女と呪いと名無しさん 既におむつ装備の俺に死角はないな!
33:魔女と呪いと名無しさん >>32 こらwww
34:紫 お前らあんまりふざけてると捻り潰すよ 女の子が困ってるのに
35:魔女と呪いと名無しさん
36:魔女と呪いと名無しさん
37:魔女と呪いと名無しさん む…紫!? っkskの紫か!?
38:魔女と呪いと名無しさん つかなんで紫がここに!?
39:紫 >>38 いつもオカ版巡回して危ない話潰してるのは黄ちんなんだけど 今ちょっと壊滅的に忙しくてそれどころじゃないってことで、俺が代理してる 黄ちんほどオールマイティじゃないけど、俺もそれなりに場数は踏んでるし
あおちん、続き頼める?
40:あお 紫さん!?ありがとうございます、助かりました。天M達がお世話になったそう ですね 私、皆さんの連絡先知らなくて…E監督はタイミング悪くプロジェクトの関係 で山奥の学校に行っちゃってるから、連絡つけられないし 続きいきます
その手紙を、言われた通り天Mは家に帰ってから見たらしいの そこにはこんなことが書いてあったんですって
「天M様
貴方は××人目の伝達者に選ばれました。 咎を運ぶ御役目をお果たし下さい。 これと同じ文面を手書きで書いた後、貴方の最も疎ましい人の名前とご自分 のサインを書いて人数を+1とし、御本人にお渡し下さい。 そして“家に帰るまで手紙を見てはならない”“帰ったらすぐ見なければな らない”旨をお伝え下さい。 破れば手紙を受け取った方か渡した方のどちらかが御役目を果たさなかった ものとして死を受けます。 それにて引き継ぎは完了となります。 引き継ぎがこの手紙を受け取ってから二十四時間以内に行われなければ、貴 方様が死を受けます。 尚引き継げる相手は、貴方様の知る限りで一度も御役目についていない者の みです。破れば失敗とみなし、同じく貴方様が死を受けます。
差出人 ○●×」
最後に書いてあった名前は、天Mに手紙を渡した先輩だったそうです
41:魔女と呪いと名無しさん パッと見は…わりとありがちな不幸の手紙?ちょっと文面気持ち悪いけど
42:あお 私も天Mに相談された当初はそう思ったの でも手紙をもらった翌日の朝練で、指揮者キャプテンと騎士Kが真っ青な顔で 天Mを見て 「お前なんてとんでもないもの拾ってきてるんだ!?」って怒って
急いで顧問のO先生に調べて貰ったら 出回ってた手紙がこれ一枚じゃなかったってことが分かったの 同じ手紙を貰った人の中に…死人が出てるってことも
43:魔女と呪いと名無しさん え
44:魔女と呪いと名無しさん まじ…で?
43:紫 偶然の可能性もある でも、指揮者ちんと騎士Kちんが揃ってヤバイって言ってるなら本当だと思う な タイムリミットが一日しかないってかなりキツいね
とりあえず天Mは何時くらいに手紙貰ったの? 今のこの時間じゃかなりヤバくない?
44:あお >>43 四時くらいって言ってた 正直時間が無かったから、とりあえず応急処置として手紙を回すことにしたん です 今次の手紙は騎士Kに渡ってます
四時をすぎても天Mは大丈夫だったので、手紙が本物だとしても天Mは役目を 果たしたってことで無事なんでしょう でも
45:魔女と呪いと名無しさん 早く次を回さないと騎士Kが…!
46:魔女と呪いと名無しさん うわああああん嫌だあああああ!
47:魔女と呪いと名無しさん なななななんとかなんねぇの!?
48:紫 お前らが慌ててどうするの しっかりしなよ、一番困ってるのあおちんなんだから
とりあえずヤバそうだってことで赤ちんと連絡とる あおちんもなんとかE監督に連絡とる方法探して あと、みんなで対策会議しよう。 できれば天Mちんにもっと詳しい話、聴きたいからさ
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笑って、笑って、笑って欲しいの。