あか、あか、あか。
【誰かが】 負の連鎖を止めて・13 【必ず死ぬ】
とっさに後ろに跳んだ、その判断は正解だったらしい。さっきまで天馬がい た場所から伸びてきた腕が、ずるずると周囲の机や椅子を飲み込んで消えてゆ く。
「あなたが」
その光景に肝を冷やしながらも、天馬は対話を続ける。
「あなたが知りたいのはアルフレッドさんが何故死ななかったか、ですよ ね?」
金髪の女の亡霊――どう見ても日本人ではないが日本語を喋ってはいた―― は。教えろ、答えろと言った。つまり彼女は答えを知りたがっているのだ。
「生憎だけど俺も知りません。ただ、あの人のことを俺の友達は、背中に人間 じゃ背負いきれないほど銃を負った“先見の英雄”だと言った。人間じゃ背負 いきれないってことは、人間じゃないのかもしれない」 『………』 「あるいは、彼を殺しかけたあなたにはもう、その答えに見当がついているの ではないですか?」 『………!』
そう言った途端、亡霊はハッとしたような顔になり――次の瞬間怒気が膨れ 上がった。まずい、と天馬は思う。どうやらうっかり地雷を踏んだらしい。
「天馬!」
葵が悲鳴に近い声を上げる。お守りの水晶は切り札だ、ギリギリまで使いた くない。ならば。
「仕方ない!“真・マッハウィンド”!」
ボールを蹴り上げ、一気に加速して叩きつける。必殺技を思い切り悪霊にぶ つけた。 本来物理攻撃は幽霊相手には効かない。が、物理攻撃がまとう“気”ならば 話が別だ。自分達サッカープレイヤーはその“気”をボールや体に纏わせて放 つことができる。それがサッカープレイヤーがサッカープレイヤーたる所以と も言えるのだが。
『ギャアアア!』
ボールと、ボールに巻き上げられた風をもろに食らった亡霊が悲鳴をあげ る。それなりのダメージは与えられたのだろう。部屋の中で蠢いていた黒い手 達が散り散りになって消えてゆく。 だが。
「駄目、天馬!開かない!」 「くそっ」
ドアも窓も相変わらず開かない。残念ながらそこまでの力は削げなかったよ うだ。当然と言えば当然、今の天馬の必殺技は本気には程遠い。この狭い教室 では加速するのに限界があるのだ。
『教えろ…答えろ…』
やはり力が、足りない。亡霊の姿が再び戻ってゆく。天馬はギリリ、と奥歯 を噛み締めた。全力の必殺技が出せない。あとは化身しかないが、下手な真似 をすると教室にいる他の生徒達を巻き込んでしまう。 どうする。どうすればいい。 このままでは−−。
「“Impedimenta”!」
その瞬間。閃光が、宙を切り裂いていた。天馬ははっと顔を上げる。鋭い悲 鳴。見れば髪を振り乱した女が、雷で出来た檻にとじこめられている。
「よくも人の魔法を使って好き勝手してくれたな」
かたん、と。軍靴が床を叩く音がした。嵐のような有様の部屋の中心。いつ の間にか、一人の人影がそこにある。
「あな、たは?」
ややボサボサの金髪に濃い緑色の軍服。あっけにとられる天馬の前で、その 人物が振り向いた。思いの外若い青年だ。キリリとしたやたら立派な眉が印象 的だが、非常に整った顔立ちをしている。 見覚えはない、が。
「悪かったな。俺の魔導書のせいでこんな騒ぎにしちまって」
圧倒的な威圧感にテレポート。“視る”のが得意でない天馬でさえ分かる。 彼は――普通の人間などではない。
「弟が世話になったな。……俺の不始末だ、尻拭いは自分でするさ」
分厚い本を片手に持ち、ニヤリと笑って−−青年は再び悪霊の方へと向き直 った。きっと素晴らしく黒い笑顔を、檻の中の獲物に向けていることだろう。
「女性には礼儀正しく接するのが紳士だが……“敵”となっちゃ話が別だ。よ くもうちの弟をやってくれたな」
ぱさり、と。本のページが捲られた。
「光栄に思え。この“代償の魔術師”、アーサー・カークランドが直々に手を 下してやるんだからな」
***
・ ・ ・
375:魔女と呪いと名無しさん 天M…紫…
376:魔女と呪いと名無しさん 誰も戻ってこないな
377:魔女と呪いと名無しさん まさか本当にやられちまったのか?
378:魔女と呪いと名無しさん >>377 バカ、滅多なこと言うなよ! 天M達がそう簡単にやられるもんか!
379:魔女と呪いと名無しさん そうだよ あのアルルネシアにだって勝ったやつらだぞ!紫に騎士Kもいるんだ!
380:魔女と呪いと名無しさん あいつらの強さは、あの時リアルタイムでスレを見守ってた俺らが一番よく知 ってる!
381:魔女と呪いと名無しさん あいつらが負けるもんか! 俺は信じて待つぞ!
382:魔女と呪いと>>377さん そっか…そうだよな なんかごめん
俺も信じる
383:魔女と呪いと名無しさん そうだ、信じよう!
384:天M ただいま
385:あお ただいまです
386:魔女と呪いと名無しさん あいつらなら負けない!
387:魔女と呪いと名無しさん 絶対勝つ!
388:魔女と呪いと名無しさん お
389:魔女と呪いと名無しさん 天Mうううう!
390:魔女と呪いと名無しさん 良かった天Mううううううううう!
391:魔女と呪いと名無しさん あれ、あおちゃんも一緒?
392:あお >>391 書き込みできなかったけど私も天Mと同じ図書委員だから 現場にいたのにお知らせできなくてごめんね
393:魔女と呪いと名無しさん いいって あおも大変だったんだろ?
394:魔女と呪いと名無しさん お疲れ様んぼ
395:魔女と呪いと名無しさん こうして書き込みできたってことは二人は無事なんだよな?
396:天M うん、無事
397:魔女と呪いと名無しさん 騎士Kタソは?
398:魔女と呪いと名無しさん 紫!紫は!?
399:騎士K 無事だ、大丈夫
400:紫 俺も無事〜 あ、400げっと
401:魔女と呪いと名無しさん 良かったあああああ!
402:魔女と呪いと名無しさん おまいらああああああああああああ!
403:魔女と呪いと名無しさん 本気で心配したんだからなああああああ!
404:騎士K みんなすまない、心配かけて
405:紫 ごめんねぇ うん なにから話すべきなのかな
406:魔女と呪いと名無しさん 何からでもいいから話してくれ
407:魔女と呪いと名無しさん 順番に話してくれるとわかりやすいかな
408:魔女と呪いと名無しさん 頼む 教えてけろ
409:魔女と呪いと名無しさん >>408 けろwwww
410:紫 そうだね、まず俺達の方なんだけど あの時グラウンドで待ってたらね、突然あたりから黒い腕がいっぱい生えて襲 われたんだ 狙われてるのは騎士K君みたいだった
411:騎士K すっかり取り囲まれて、身動きがとれなくなったんだ 必殺技と紫さんの力でなんとか凌いでたんだけどな そしたらあおから電話かかってきて、天Mも大変なことになってるって知った んだ
412:魔女と呪いと名無しさん 同時進行だったっぽいもんな
413:魔女と呪いと名無しさん けどなんで天Mや紫達が襲われたんだ? 手紙はヒーローがもってるんだし 別件だったのか?
414:紫 そこは誰かさんの考察通りだったみたいだよ 手紙に憑いてた呪いが具現化したかんじだったんだけど 教えてとか答えろとか、金髪の女が現れてさ しつこく訊かれたんだよね なんであの男は死ななかったんだって そんなの俺達だって知らないのに〜
415:魔女と呪いと名無しさん あの男って
416:魔女と呪いと名無しさん もしかしなくてもヒーローのことか
417:魔女と呪いと名無しさん 菊はまだスレ見てないのか?
418:魔女と呪いと名無しさん もしかして、菊って青の携帯かPCとか使ってるんじゃないか?
419:魔女と呪いと名無しさん >>418 だろうけど、なんだよ
420:魔女と呪いと>>418さん いやさ、菊って一般人には姿見えないんだよな? それで、青が人目のある場所や 携帯使えない状況だったりすると… スレ見れないんじゃないかと思って
421:魔女と呪いと名無しさん 例えば
422:魔女と呪いと名無しさん あー
補習中とか?
423:魔女と呪いと名無しさん
424:魔女と呪いと名無しさん
425:魔女と呪いと名無しさん
426:魔女と呪いと名無しさん
427:魔女と呪いと名無しさん あー
428:魔女と呪いと名無しさん ありえるわ…
429:魔女と呪いと名無しさん 青ならなぁ…
430:紫 ありえるね 青ちんもうちょっと追認受ける羽目になるって騒いでたから
431:魔女と呪いと名無しさん 追認!?ヤバくね?
432:魔女と呪いと名無しさん ごめん追認がわかんない なんだっけ
433:魔女と呪いと名無しさん >>432 追加認定試験だよ! 落ちたら留年! 高一で留年とかマジで笑えないぞ!
434:魔女と呪いと名無しさん マジかそれえええええ!?
435:魔女と呪いと名無しさん ぎゃああああああああああああ
436:騎士K ……うわあ
437:紫 青ちーん 騎士Kにドン引かれてるよー …まあ話逸れたけど 天Mちんも似たような状況?
438:魔女と呪いと名無しさん そうだった
439:魔女と呪いと名無しさん ハッΣ( ゜д゜ ) すまん話逸らしたわ
440:天M 粗方似たようなものです 先生がいなくなった途端、ドアや窓の鍵が全て閉まって開かなくなりました そして金髪の女性の悪霊に同じことを聞かれて…
問題はこちらは屋内だったこと おかげで必殺技も全力が出せなくて苦労しました
441:魔女と呪いと名無しさん おぅふ
442:魔女と呪いと名無しさん 言われてみればそうだよな
443:魔女と呪いと名無しさん サッカーの必殺技なんて 狭い教室で出すのに向いてるはずないなorz
444:紫 嫌なキリ番踏んじゃった…
まあそんなことだろうと思って 最初助けに行こうとしてたの、空間系は俺の十八番だから 問題は人質が多いんだよね 俺と騎士K、天M、あおだけなら離脱できたんだけど 教室にもグラウンドにもたくさん人がいたからさ その全員を離脱させるのはさすがの俺も無理だったよ
445:魔女と呪いと名無しさん じゃあ…どうやって切り抜けたんだ?
446:魔女と呪いと名無しさん だよな
447:天M 助けてくれた人がいたんです 今回の魔法の元を作った人
代償の魔術師さんが
NEXT
|
作り上げられたよく似たニセモノ。