そして、舞い散るは。
 
 
 
 
【誰かが】
負の連鎖を止めて・28
【必ず死ぬ】
 
 
 
 
 きっとアーサーは怒ってるんだろうな。アルフレッドは考えて憂鬱になっ
た。もうそろそろ病院を抜け出さなければ、また呪いが始まってしまう。それ
もまた憂鬱な理由の一つだ。
 死ぬのが怖くないわけじゃない。でもそれ以上に、自分のせいで誰かに死な
れる恐怖の方がずっと大きい。自分はまだ無力だと、誰かに守られるしかでき
ない存在だと見せつけられるのが−−アルフレッドにとっては何よりの恐怖だ
った。
 殊に、アーサーに関してはそう。彼との間にはあまりに色々なことがありす
ぎたから。
 
――まさか何百年も……独立戦争を引きずってくるとは思わなかったしね。
 
 毎年アルフレッドの誕生日になる度体調を崩すというアーサー。それほどま
でにショックを受けて、挙げ句人一人の人生より遙かに長い時間悩み通すだな
んて想像もしていなかったことだ。
 彼はアルフレッドが思っているよりずっと不器用で臆病だった。思えば独立
前に自分の話を全く聞く耳を持たなかったのも。アレも駄目コレも駄目とやる
ことなすこと規制をかけて縛りつけたのも。アルフレッドが離れて行くのを畏
れたゆえの行動だったのだろう。
 彼は実の兄達に愛されなかったから。今でも自分は誰にも愛されやさないと
思っているから。愛することにあまりにも不器用だったのだ。
 
――家族に対しても友達に対しても……独占欲強すぎるんだから、ほんと。
 
 菊――日本に対してもそうだ。日英同盟の際の手回しぶりったらもう。菊が
他の国と仲良くしないようにあれやこれやと動きまくる徹底ぶり。さらには甘
すぎる条約の締結である。
 あまりに面倒くさくて分かりやすいかの人に、アルフレッドはただただ笑う
しかない。
 
――もう少し器用な生き方ができたら。あんなに苦労する羽目にもならなかっ
たろうにね。
 
 ふと、気配を感じて。アルフレッドはベッドから上半身を起こした。傷は全
然治りきっていない。なんせトラックに挽き潰されたのだから、いくらアルフ
レッドでも回復には時間がかかる。
 あちこち激痛が走ったが。それより今は驚きが勝っていた。
 
「君……」
 
 いつの間にか。病室に、一つの影があった。金髪を揺らした少女。見覚えが
ある。以前にも此処に現れた、手紙の呪いの元凶だ。
 どうして彼女が此処に。まだ時間にはなっていないし――というか以前とは
だいぶ雰囲気が違うような気がするのだが気のせいだろうか。
 
『……あなた』
 
 アルフレッドが何かを尋ねるより先に。透き通った体の幽霊は口を開いた。
 
『あなたが私の祖国だというのは、本当なの?だから私の呪いで死ななかった
って、そういうの?』
 
 ああ、アーサーあたりに訊いたのか。自分が国であることを――つまりはア
メリカ合衆国の化身であるということを。
 彼女は自分の国民だ。彼女もそれに気づいたのだろう。自分は、狙ってした
ことではないとはいえ、自らの祖国を呪ってしまったことを。殺そうとしてし
まったことを。
 
「そうだよ。君は俺の国民。俺は君の、国。アメリカ合衆国だ」
 
 別に隠していたわけではないけれど。もうハッキリとカミングアウトした方
がいいだろう。
 アルフレッドには分かっていた。彼女が今ここに来た意味。彼女が前に進め
るかどうかの最後の鍵は、自分にかかっているのだと。
 
「いくら呪われようと祟られようと、俺達は国が消えない限り死ぬことはな
い。天災や、政府の崩壊とかで消えることはあるけどね。少なくとも俺が今君
に殺されることはまず有り得ない。それが分かっていたから、手紙を受け取っ
たんだ」
 
 今の自分には、多少のモノなら視れる眼がある。ましてや国は自分の国民な
ら見れば分かるし、その気配にも敏感だ。
 だからすぐに分かった。この手紙の主が、自分の国民であることは。
 
『……恨んでるわよね、私を』
「どうしてそう思うんだい?」
『だって私は……あなたを殺そうとしたわ。それも、何回も』
 
 メアリーは俯き、消え入りそうな声で言う。
 
『知らなかったとはいえ……祖国を殺そうとしたなんて。大罪でしょ?』
 
 まだ若いなあ。アルフレッドは苦笑した。自分も国としてはかなり若い方だ
けど。それでも伊達に五百年生きてるわけじゃない。少しは人間達より、いろ
んなものが広い視野で見えているつもりだ。
 
「俺がそれを分かった上で、手紙を引き受けたとしても?」
 
 だから、やるせない。
 彼女のようにまだ若くて、悪く言えばまだまだ幼いままの人が。あまりにや
るせない理由で自ら命を断ってしまったことが。
 
「分かっていたよ。君が俺の国民だっていうこと。分かった上で、俺も選んだ
んだ」
 
 勿論スレッドで見た段階では、予感がしただけだったが。手紙を見て確信し
たのだ。そこには確かに、自分の愛する国民の気配があったから。
 
『どうして、そんな』
「彼らを助けたかったのもある。自分にも誰かを助けられるんだって思いたか
ったのもある。でも一番の理由は……君にちゃんと伝えたかったからさ。君は
間違ってるって、それを伝える一番の方法は俺も全力でぶつかることだと思っ
たんだよ」
 
 彼女の眼が、揺れる。アルフレッドは続けた。
 
 
 
 
「我が子の過ちを、止めない親が何処にいる?愛している我が子を助けたくな
い親が何処にいるんだい?」
 
 
 
 アルフレッドにとって国民達は愛しい我が子そのものだった。きっと他の
国々もまたそうであるように。
 
 
 
「特に俺はヒーローだからね。お姫様が困ってたら助けない理由がないんだ
ぞ!」
 
 
 
 微笑んでみせるアルフレッドを、彼女は「信じられない」といった眼でまじ
まじと見て、やがて一つ、息を吐いた。
 
『……国ってみんなそうなのかしら。何でも知ってるつもりだったのに、ここ
最近は知らないことばかりでうんざりするわ』
「そうかい。それで?君は俺に何かを言いに来たんじゃないのかい?」
『………』
 
 メアリーは少しだけ視線をさまよわせて、やがて小さく、泣きそうな顔で言
った。
 
『……ごめんなさい』
 
 やっと言えたか。アルフレッドは内心苦笑する。自分も人のことは言えない
けれど。この人も大概だったようだ。肝心なところで大事な一言を喉に詰まら
せてしまう。
 何も謝罪を強要したかったわけじゃない。ただ後悔して欲しくなかったの
だ。自分も彼もたった一言が言えないばかりに何百年と後悔する羽目になった
から。自分に言えないようでは、きっと彼女に言うのも無理であろうから。
 
「俺にそれが言えるなら。彼女にもちゃんと言えるよね?行っておいで。もう
後悔したくないだろう?」
 
 何が最善かなんて誰にもわからない。何が真の正義かなど神様でさえ決める
権利を持たないものだ。
 だから自分達にできることは。今やれる精一杯で足掻き続けることでしかな
いのだと思う。それは国でも、人間でも変わらないことだ。
 
『……ありがとうございます、祖国』
 
 彼女は両手で顔を覆って、嗚咽を漏らした。
 
『こんな私だけど、生まれ変わったらまた……貴方の国民にしてもらえます
か?』
「勿論だよ。何百年だって、待ってるんだぞ」
 
 アルフレッドは笑って答えた。それできっと、充分なはずだ。
 
 
 
 
 ***
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 
812:魔女と呪いと名無しさん
おいニュース!ニュース見たか!?
 
813:魔女と呪いと名無しさん
見た見た見た見た!
ウォッチセブンで見た!
 
814:魔女と呪いと名無しさん
T駅の異常が解消されたって!電車がちゃんと着くようになったって!
 
815:魔女と呪いと名無しさん
本当に良かった!実も騎士Kもみんなお疲れ様!
 
816:
無駄に疲れたぜ…
 
817:
何言ってるのよ青ちゃん
あなたただ楽しそうにボールぶつけてただけじゃない
フォローに走り回るこっちの方が百倍大変だったわよ!
ちょっとは天Mちゃん達を見習いなさい!
 
818:魔女と呪いと名無しさん
青www姐さんに説教されてるwww
 
819:魔女と呪いと名無しさん
楽しそうだったんかwww
 
820:
うっせぇよ、俺だって大変だったんだぞ、うっかり黒にイグナイトされるし!
 
821:
すみません幽霊と間違えたもので
 
822:
ぜってーわざとだ!
 
823:天M
というか黒さんいたんですか!?
 
824:騎士K
いつからいらっしゃったんですか!?
 
825:
黒さんいつの間に!?
 
826:
………最初からいたんですけど
 
827:魔女と呪いと名無しさん
黒www
 
828:魔女と呪いと名無しさん
稲妻組の反応フイタwww
 
829:魔女と呪いと名無しさん
いつも思うけどどれだけ影薄いんだよ黒様www
 
830:魔女と呪いと名無しさん
凄まじいミスディレ率www
 
831:紳士
ま、まあ
何はともあれみんな無事で事件も解決だ
さっきヒーローからメール来たけど、あいつもちゃんと無事みたいだぞ
 
832:魔女と呪いと名無しさん
そうか!
 
833:魔女と呪いと名無しさん
呪いは発動しなかったんだな!
 
834:魔女と呪いと名無しさん
本当に良かった…(´;ω;`)
 
835:魔女と呪いと名無しさん
これで世界は救われたんだな…
騎士K達のおかげだな!
 
836:騎士K
俺達は別に特別なことをしたわけじゃないさ
全部彼女が最終的に選んだ結果だ
きっと気付いてくれたんだと思う
自分を本当に幸せにできるのは、白い魔法だけなんだってな
 
837:天M
さっきあおにもメールしてきた
だいぶ心配かけちゃったからあとで怒られるかもなあ;;
 
838:魔女と呪いと名無しさん
おうおう説教されてこいwww
 
839:魔女と呪いと名無しさん
くっそリア充末永く爆発しろやあああ!
 
840:魔女と呪いと名無しさん
あおちゃんと仲良くやれよ〜!
 
841:天M
なにいってるの!別に俺とあおはそんなんじゃないってば!
 
842:
いいですねぇ若いって
皆さんとはまた近いうちにお会いするような気がします
その時はまた、一緒に戦ってくださいますか?
 
843:魔女と呪いと名無しさん
勿論だとも!
 
844:魔女と呪いと名無しさん
俺達はいつでも待ってるぜ!
 
845:魔女と呪いと名無しさん
黒も天M達も、これからも頑張れよ!
 
846:魔女と呪いと名無しさん
応援してるからな!
 
847:
みんなありがと〜
 
848:魔女と呪いと名無しさん
さて、早いけど>>1000の願掛け考え始めようかな
 
849:魔女と呪いと名無しさん
さんせー!まあ願いは決まってるけどな!
 
850:ヒーロー
そうだね
 
>>850なら
これからの物語も、ハッピーエンドだ
 
 
FIN.

 

理由なら、僕が作った。