妬み恨みから、 逃れられはしないとしても。
【キセキファン】 彼らが魔女に浚われた ・第一夜・17 【力を貸して】
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176:ねぇあたし、トイレの名無しさん 返り血…
177:ねぇあたし、トイレの名無しさん 暗闇に乗じて刺されたのか、鷹
178:火 わからねぇ 赤司が携帯拾って、その明かり頼りに二階上がってブレーカー上げてきたんだ けど 電気は普通についた そこで俺達やっと鷹が死んでるのに気付いたんだ、倒れてるのが誰かも最初わ からなかったからよ
抵抗したのかなんなのか、鷹は胸以外にも傷があって だいぶ辺りに血だ飛んでて みんなどっかしらに血を浴びてる
179:ねぇあたし、トイレの名無しさん ひでぇ…
180:ねぇあたし、トイレの名無しさん 鷹が持ってた、緑間の携帯 なんか手がかりは無かったのか?
181:火 >>180 残念ながらそれらしいもんは何も 強いて言うなら…なんか血じゃないもんが携帯についてるみたいなんだが
赤い塗料?
182:E監督 それ、二階の…月先輩が死んでた部屋の入り口にあった魔法陣のじゃないか? 鷹、扉に体当たりして開けたんだろ 服や身体についていてもおかしくないと思うけど
183:ねぇあたし、トイレの名無しさん そういえば
184:ねぇあたし、トイレの名無しさん 入口の魔法陣、まだ乾いてなかったつってたもんな
185:ねぇあたし、トイレの名無しさん そういや、犯人がどこにいたかはさておき どうやって鷹を刺したんだ?真っ暗で何も見えなかった筈なのに
186:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>185 言われてみれば確かに
187:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>185 鷹を狙ってたか、たまたま鷹だったのかは別として 犯人だって迂闊に動けなかったはずだよな
188:赤 蛍光塗料か!
189:ねぇあたし、トイレの名無しさん え?
190:赤 やっぱりそうだ 火から鷹の携帯借りて、暗いとこで見てみたら 赤い塗料がついてたところが光ってる! 鷹は扉に体当たりしたから、上半身のあちこちに塗料が付着してた 犯人はそれを目印に鷹を刺したんじゃないか!?
191:ねぇあたし、トイレの名無しさん ああ!
192:ねぇあたし、トイレの名無しさん な、なるほど!
193:火 でも待てよ 扉に体当たりしたの、日主将と青峰もだろ その三人の中から鷹だけ狙うとかできんのかよ
194:騎士K 鷹さんを狙ってたわけじゃないかもしれませんよ 三人のうち、誰を殺しても良かったのかも
195:ねぇあたし、トイレの名無しさん …最悪だ
196:ねぇあたし、トイレの名無しさん 鷹は運が無かったってこと?
197:ねぇあたし、トイレの名無しさん 鷹ぁ…
198:ねぇあたし、トイレの名無しさん 他の奴が殺されていいとは思わないけど、でも騎士Kの言う通りならほんと運 がないとしか
199:赤 とりあえず…このままじゃ鷹があんまりだ ソファーに寝かせてあげることにする
運び出してあげたいけど、今バラバラになるのは危ないから… どのみち血のあとはどうにもならないし
200:ねぇあたし、トイレの名無しさん 200げと だけど赤様、みんなで一緒にいれば安全とはもはや言い切れないぞ だって今行方不明者と死者以外みんな一緒にいたのに、鷹は刺されたんだから
201:ねぇあたし、トイレの名無しさん 200の言う通りだ さっきみたいにまたブレーカー落とされたら
202:ねぇあたし、トイレの名無しさん つか犯人はブレーカーどうやって落としたんだよ なんか仕掛けでもしてあったのか?
203:赤 ブレーカーそのものにそれらしい仕掛けは無かったな まあいろいろ方法はありそうだから一概には言えないけど、犯人が普通に手で 落としたのかもしれない パニックになってみんな喚いたり走り回ったりだったから、闇になった瞬間誰 かが階段を上り下りしても分からなかったはずだ
と
204:火 JK監督、顔が真っ青だ 無理もねぇ…監督、鷹の血頭から浴びてんだからよ いくら気が強くても、女の人だし JK監督、顔だけでも洗いたいって言ってる 日主将が付き添うって
あ、ちなみに今十時半
205:ねぇあたし、トイレの名無しさん 二人だけとか、ちょっと危なくないか?
206:ねぇあたし、トイレの名無しさん もう一人くらいついてった方がいいんじゃ
207:赤 僕もそう思ったけど…なんか二人きりにして欲しかったみたいだ 野暮な詮索はしないけど、付き合ってるのかな日主将とJK監督?
208:火 いや赤、俺に訊かれても困るし 二人ともキッチンに行った
俺らしばらく玄関ホールに待機 …血だらけのこの部屋にあんまいたくないけど…鷹を一人にすんのも可哀想だ し
ってかさ 月先輩も黒子もそのままだったじゃん せめてどっかベッドに寝かせてやれば良かった 黒子なんか、冷たい廊下とかあんまりじゃんか
209:ねぇあたし、トイレの名無しさん 火…
210:ねぇあたし、トイレの名無しさん 優しいんだな…火は
211:ねぇあたし、トイレの名無しさん ただ現場保存を考えるとさ、どんなに酷でもほんとは遺体を運び出したりとか、 しない方が良いんだよな… 警察いないから、尚更さ
212:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>211 分かってても、感情ってそう簡単なもんじゃないだろ
213:ねぇあたし、トイレの名無しさん とりあえず…日主将とJK監督帰ってきたら、二階また探しに行った方がいい よな 緑間行方不明だし
214:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>213 一階も探すべきだろ そもそも一番最初からいない紫原はほんとどこに行ったんだよ
215:ねぇあたし、トイレの名無しさん 屋敷の外もぐるっと回ってみたらどうだ? あともしかしたら屋根の上とか
216:E監督 なんかざわざわする
217:ねぇあたし、トイレの名無しさん E監督?
218:赤 何か気になることでも?
219:E監督 >>赤 いろいろ引っかかるんだけど、何が引っかかるかよくわからない なんかとんでもない見落としをしてないか?俺達
220:ねぇあたし、トイレの名無しさん 見落とし?
***
ざぶざぶと顔と髪を洗う。服にはまだ血がこびりついていたし、濡れた髪を 乾かす手段もなかったが、それでもやらないよりはマシだった。いくらリコで も、血まみれのまま平然としているのはさすがに無理があるというものである。
「…付き合わせちゃってごめんね、日向君」
息を一つ吐いて。食器棚にもたれかかる日向に笑いかけた。 いや、そのつもりだったのだが。リコの笑顔を見た日向には、苦々しい顔で ため息をつかれてしまった。 「無理すんなカントク」 「!」 「今俺しかいないんだ。…無理に笑う必要なんかないだろ」 「……」 なんというか。女を慰めるのが苦手なのが伝わってくる言葉。でも、リコを とても心配してくれてるのも分かる言葉だ。
「うん。……ありがと」
彼といると、ほっとする。部活の主将だからとか昔馴染みだからとか、もし かしたら他にも理由はあるのかもしれないが。彼と二人きりになって、やっと 一息つけた気がするのだ。 無理をしていたのは確かだ。自分一人だけ女の子だからといって甘えるべき じゃない。自分が弱々しい様を見せれば、日向や火神−−いや、他のメンバー だって気を使うだろう。ただでさえ今でも庇ってもらいがちなのだ。これ以上 皆の負担になるのは避けたかった。 女の子だろうと、自分は火神達の先輩。むしろ自分がしゃんと立って、皆を 守るくらいでなければならない。
「…まさかいきなり、こんな事になるなんて思わなかったわ。しかも魔女だな んて、オカルトもいいとこだし」
困った。本当に困った。安心したらまた涙が出てきてしまった。落ち着いた と思っていたのに。 おまけに日向がぽんぽんと優しく背中を叩いてくれるものだから、余計涙腺 が緩んでしまう。 「…黒子君。きっと痛かったよね。怖かったよね。伊月君だってあんな…あん な変な部屋に閉じ込められて…っ!」 「カントク…」 「なんで?何でみんなあんな目に遭わなきゃいけなかったの?みんなが何した っていうの?ねぇ…」 赤司は言った。この世界がもし本の筋を辿っているなら−−第一巻の事件が 全て終わった後、全員もう一度生き返るのではないかと。そう思って、割り切 って答えを探すしかないのだと。 彼が言うことは正しい。自分も、落ち着いて推理を組み立てるべきと分かっ ている。しかし、感情が追いついてはくれないのだ。 考えても。考えても。考えても。頭の中はぐちゃぐちゃになるばかりで、と てもまとまってはくれそうにない。
「…そういえば、日向君。なんでキッチンに来たの?顔洗うなら右廊下のお風 呂場の方が良かったんじゃない?」
ふと気付いたので尋ねると、日向は“まぁな”と煮え切らない顔で言った。
「ちょっと気になることがあってさ。わざとリコにもこっち来て貰った。…俺 らが長く戻らないと、みんな心配するとは思うんだけど…」
なんだろう。酷く言いにくそうである。いつもハッキリ物を言うことが多い 日向にしては珍しい。 リコが辛抱強く続きを待っていると、まるで何かを気にするように日向は廊 下へ至るドアの方を見た。 「落ち着いて聞けよ。カントクも気付いてるとは思うけど…高尾を殺した奴は、 今玄関ホールにいる奴らの中にいると思わないか?」 「……!」 「あの真っ暗闇だぞ。普通に動き回るのだって難しいのに…遠くから歩いて来 て高尾を刺しにくるとかあり得るか?いやなくはないけど、ちょっと無謀じゃ ね?」 ちなみに此処で言う“玄関ホールにいなかったメンバー”とは、行方不明の 紫原と緑間をさす。“玄関ホールにいたメンバー”は無論、リコと日向を除け ば赤司、青峰、火神の三人ということになる。 日向の推察は正しいだろう。緑間と紫原がどこに消えたかは分からないが、 そもそも自分達の誰かしらがずっと玄関ホールにいたわけで。玄関ホールに隠 れているとは到底思えない。そして玄関ホールにいなかった以上、“どこか遠 くから歩いてきた”ことになる。暗闇の中でそれは少々現実的ではない。
「こう言っちゃなんだけど…私が犯人だとは思わなかったの?」
しかし玄関ホールには自分もいたのだ。勿論リコ自身のことだから、自分が 高尾を刺してなどいないのは一番よく分かっているが−−信用して貰えるかは また別の問題である。
「カントクにゃ無理だろ、いろんな意味で」
日向が苦笑しながら頭を掻いた。 「それより、カントクはどうなんだよ。俺を信じてくれんのか?」 「信じるわ」 リコは即答する。信じていなかったら、最初から頼んでいない。一緒に来て 欲しい、なんて。
「私と日向君の仲でしょ」
信じるともう、とっくに決めている。
「…ありがとな」
日向は少し笑って−−そして。
「調べたいもんがある。少し付き合ってくれるか」
険しい表情で、食堂に続くドアを見た。
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眠らせてあげましょう。