だって強くなきゃ、
 誰も守れやしない。
 
 
 
 
【キセキファン】
彼らが魔女に浚われた
・第一夜・7
【力を貸して】
 
 
 
 
 
 
 黄瀬は慎重に、二階の廊下を見回した。二階は両の突き当たりに窓がある分、
少し明るいように感じる。仮に停電でも起きても、動き回ることは不可能では
ないだろう。
 
−−思ったんスけど…なんなんスかあの部屋は。
 
 階段を登りきった真正面には、魔女の絵が飾られている。その絵の下にやた
ら大きな扉があるのだが(この鉄扉は一階の玄関ホールからも見える位置にあ
る)、その部屋の中がまた異様なものだった。
 真ん中に魔法陣。蝋燭に暗幕。一目見てなんらかの魔術的儀式を行う場所だ
と分かる。本来ならこの中もちゃんと探すべきなのだろうが−−本能的生理的
に、この部屋に入りたくなかった。入ったらとてもマズい事が起きる予感がす
る−−なんて、都合の良い言い訳だろうか。
 それに物音はこの部屋からでは無かった気がする。二階の、もっと左の方だ。
 
「あ」
 
 左廊下の、奥から二番目の部屋のドアが小さく開いている。この部屋だろう
か。黄瀬は周囲を警戒しつつ、ドアを開け、中に体を滑り込ませた。
 
−−……!
 
 中は普通の部屋だった。一般的なビジネスホテルなどの部屋を想像して貰え
ばいい。一人分のベッドに、丸テーブルが一つ、椅子が一つ。奥にはトイレら
しき小さなドアとクローゼット。窓は閉められ電気は消えていたが、カーテン
は引かれていない。月明かりだけでも、中を見回すだけなら充分だった。
 ベッドの脇に。誰かが倒れているのが見える。身長的に紫原ではない。だと
すれば。
 
「伊月さん?」
 
 消去法なら、伊月しか有り得ない。自分、紫原、伊月以外の面子は全員、待
機か探索で一階のどこかにいる筈なのだ。
 生きているのか。死んでいるのか。黄瀬は恐る恐る近付いてゆく。どうか生
きていてくれ、と願いながら。
 それは確かに、伊月俊その人だった。否−−そうであるように、見えた。
 
「伊月さん!伊月さんてば!」
 
 しかし黄瀬が彼の肩を掴み、揺すった瞬間。彼はカッと眼を見開いて−−。
 
「ふふっ…ふふふふふ」
 
 ニィィ、と。普段の彼ならば絶対しないような笑い方で、嗤った。
 
「ふふふふふあはははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははっ!」
 
 ぞっと背筋を這い上がる感覚。半ば本能だった。黄瀬は慌てて飛び退く。そ
の鼻先を、金色の何かが掠めていった。
 
「!」
 
 それは金色の、柄の長いハンマー。伊月の姿をしたその人物は、身の丈以上
のそれを軽々と振り回し、黄瀬に向かって襲いかかってきたのだ。
 
「くっ…!あんた…誰ッスか!?
 
 こいつは伊月じゃない。そして力を出し惜しみして勝てる相手でもない。黄
瀬はその身に宿る魔力を解放していた。手に金色のスピアを現して、杖を受け
止める。
 ガツン!と。杖とスピアがぶつかる甲高い金属音。黄瀬の頬を冷たい汗が流
れる。馬鹿な。体格では自分が勝っている筈なのに−−なんなんだ、こいつの
力は。
 
「うわっ!」
 
 黄瀬は完全に力負けして、弾き飛ばされた。まさか自分がパワーで押し切ら
れるなんて−−確かに自分には青峰や紫原ほどの腕力はないけれど、仮にもキ
セキの世代の一人に数えられているのだ。身体能力が低いなんてことはない。
なのに。
 
「あたしが誰か?わかってるくせに」
 
 伊月の姿をしたそいつは、伊月の顔で妖艶に微笑んだ。どう見ても伊月のも
のではない、甲高い女の声で喋りながら。
 
「悪いわね涼太ちゃん。あなたスッゴくあたし好みだし、またたぁくさん可愛
がってあげたかったんだけど…まあこれもシナリオなのよね。あなたの力は
後々厄介になる…ここで始末させて貰うわよ」
 
 ぐにゃり、と伊月の姿が歪む。やはりそうなのか、と黄瀬は思った。“また
たくさん可愛がってあげたかったのに。”その言葉が事実ならば、おそらく。
 こいつは二年前に自分を拉致した人物と、同じ。
 
「…望むところッスよ。あんたとはいずれ決着つけなきゃなんねーと思ってた
しね」
 
 伊月の姿が変わっていた。真っ赤なドレスを着込み、真っ赤な眼と赤い眼を
持った妙齢の女性に。美しく残酷な、あの肖像画の魔女と同じ姿に。
 
「本物の伊月先輩はドコッスか?紫原っちをドコに隠したッスか?洗いざらい
吐いて貰うッスよ…二ノ宮蘭子、否!災禍の魔女アルルネシア!!
 
 黄瀬はスピアを振りかぶり、魔女に攻撃を仕掛けた。魔女はニヤニヤと嫌ら
しい笑みを浮かべながら、黄瀬の攻撃を余裕でかわす。
 
「やれるもんならやってみなさい!きゃはははははははははははぁっ!!
 
 
 
 ***
 
 
 
348:名無しさん、みぃ〜つけた
なかなか収穫がないみたいだな…
 
349:名無しさん、みぃ〜つけた
あと赤様のA班が探してないのは風呂場だけか?
 
350:
そうなるね、一階には月さんも紫原もいないのかもしれないな…
 
351:名無しさん、みぃ〜つけた
…風呂場に誰か浮かんでないことを祈るぜ
 
352:名無しさん、みぃ〜つけた
>>351
おい
 
353:名無しさん、みぃ〜つけた
>>351
おい
 
354:E監督
>>351
だから不吉なこと言うのはやめろ
確かにミステリーのお約束かもしれないけど
 
355:351さん、みぃ〜つけた
悪い、不謹慎だった…
 
356:名無しさん、みぃ〜つけた
ところで緑間の班、いい加減なんか報告してくれって…
沈黙続いてると、何かあったんじゃないかって不安になるだろ
 
357:
すみません、失礼します
緑間君と同じ班の黒子です
ちょっと緑間君に携帯をお借りして打ってます
 
358:名無しさん、みぃ〜つけた
!?
 
359:名無しさん、みぃ〜つけた
ああああ黒子っちきたああああああああっ!!
 
360:名無しさん、みぃ〜つけた
色白影薄美少年黒子っちhshsprpr
 
361:名無しさん、みぃ〜つけた
>>360
阻止
黒子っちは俺の嫁だ
 
362:名無しさん、みぃ〜つけた
>>360361
何言ってんだ俺の嫁だろjk
 
363:
君達くだらない馬鹿騒ぎは後にしてくれる?全員鋏でその粗末なものチョン切
るよ?
 
黒、続けてくれるかい
 
364:
わかりました
 
365:名無しさん、みぃ〜つけた
赤様が安定の赤様でgkbr
 
366:名無しさん、みぃ〜つけた
おまいら落ち着こうぜ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
黒タソprprは脳内にとどめろ
 
367:名無しさん、みぃ〜つけた
わかったぜ366!(キリッ
 
368:名無しさん、みぃ〜つけた
わかりました隊長ぅ!b(`▽´)
 
369:
もう駄目だこのスレ…変態しかいない…
 
370:
無視しましょうそうしましょう変態爆ぜろ
 
とりあえず僕らが探索している一階左廊下の図面をどうぞ
ちなみにボクが緑間からバトンタッチされた理由は、緑間君にはこの図が書け
なかったからもあります
あんなシュート撃てるのに…結構不器用ですよね緑間君
 
       |       |
 ☆食堂       キッチン|
−−−− −−−−− −−−−
 |              玄→
 |              関
窓               ホ
 |              −
 |              ル  
−−−−−−− −−−− −−−
      書庫   | 書斎|
 
ちなみに書斎と書庫は探索完了です
次食堂に行きます
 
371:名無しさん、みぃ〜つけた
そういや緑間って料理苦手らしいな…
 
372:名無しさん、みぃ〜つけた
っていうか細かい作業が苦手らしいって噂
すごい意外なんだけど
 
373:名無しさん、みぃ〜つけた
地図乙!
書庫ってもしや相当デカい?
 
374:
>>373
大きいですよ
この図だと分かりにくいですが、ここの廊下結構長いんです
書庫は書庫というより半ば図書館みたいな状態でしたね
隠れる場所は結構ありそうなんで念入りに探したんですが、書庫でも特に見つ
かったものはありませんでした。勿論紫原君や伊月先輩もいなかったです
 
375:E監督
確か紫ってかなりデカいんだよな?
普通に隠れようとしても結構難易度高そうだけどなあ…
 
376:名無しさん、みぃ〜つけた
やっぱり一階にはいないのかもな
 
377:名無しさん、みぃ〜つけた
黒達は食堂入ったか?
 
378:
食堂なうです
広いですねここも。…ちょっと火君も緑間君も喧嘩しないで下さい、火君がお
なかすいた連呼したんで緑間君がキレ気味なんですけど
 
仕方ないので一人で探索します
あ、立派な暖炉がありますね。でもこれ飾りかも…暖炉にしてはあんまり汚れ
てないですし
 
379:
最初は使ってたけど、後で装飾用に変えたって可能性もあるね
暖炉といえばお約束は隠し通路じゃないかな。黒子、悪いけどちょっと調べて
みてくれない?
 
380:
(´・ω・`)
 
381:名無しさん、みぃ〜つけた
くwwwろwww
 
382:名無しさん、みぃ〜つけた
入りたくないんだな中にwww
 
383:名無しさん、みぃ〜つけた
中すすだらけで汚れそうだもんなwww
 
384:名無しさん、みぃ〜つけた
顔文字だけとかまじかわwww
 
385:
>>
気持ちは分かるが行けと行ったら行け
 
僕の言うことは?
 
386:
\ゼッターイ!/
 
 
 
………行ってきます
 
387:名無しさん、みぃ〜つけた
あの真っ黒子様をwwwねじ伏せたwww
 
388:名無しさん、みぃ〜つけた
赤様まじ赤様!
 
389:名無しさん、みぃ〜つけた
黒頑張って超頑張ってwww
 
390:
中真っ暗ですが…やっぱり二階に通じてるのは間違いなさそうですね
ご丁寧に梯子ついてますよ
ただ狭いので、一人ずつしか通れないかと
あとちょっと懐中電灯なしに登るのは怖いので、それは勘弁して下さい
 
 
 
……火君と緑間君の喧嘩がどんどんヒートアップしてるっぽいので止めてきま
(-_-#)
 
391:名無しさん、みぃ〜つけた
おいwww
 
392:名無しさん、みぃ〜つけた
こんな時に喧嘩すんなしwwwそんなに仲悪いのか?
 
393:
>>392
相性は最悪に近いんじゃないかな…まったく、二人はあとでオヤコロの刑だ
 
394:名無しさん、みぃ〜つけた
オヤコロwwwどんな刑ですか赤様www
 
395:E監督
まずいかもしれない
 
396:名無しさん、みぃ〜つけた
?どうした監督
 
397:名無しさん、みぃ〜つけた
え…なに…?
 
398:E監督
結論から言う。
本を探しにいかせた天M達と連絡がとれなくなった
 
 
 
NEXT
 

 

未来はドコに。