僕の足で往くんだ。
 例え、此の身が穢れていても。
 
 
 
 
 
【キセキファン】
彼らが魔女に浚われた
・第二夜・1
【力を貸して】
 
 
 
 
 
 あの後。
 最終的に自分がどうなったのか、何が起きたのか−−さっぱり覚えていない。
 火神の記憶にあるのは、赤司と青峰と三人で玄関ホールにいて−−零時の鐘
が鳴った、その瞬間までだ。
 
−−何が、どうなってやがる。
 
 何かがおかしい。屋敷の中に電気はついていない。しん、と静まり返った世
界は、静謐さと不気味さを合わせ持っている。気付いた時には玄関ホールのソ
ファーに一人座っていて、赤司や青峰はいなくなっていた。というか、自分が
いるソファーには高尾の遺体が寝かされていたはずだがそれもなくなってい
る。
 おまけに時計の時刻。零時だったのは間違いないのだ。なのに何故−−七時
半なんて時間を指しているのか。
 
−−まさか…?
 
 スレッドの内容を手探りに思い出す。二ノ宮蘭子著、幻想の裏側第一巻。そ
れは十一人全員が皆殺しにされて終わるのだという。そして第二巻では、何故
か全員生き返っていて−−。
 
−−死んだのか、俺?
 
 あの後。自分は死んで−−だから時間が巻き戻って生き返ったのだろうか?
もしそうならば、あの時死んでしまった仲間達ともう一度再会できる。その代
わり−−もう一度、残酷な連続殺人が、自分達を襲うことになる。
 自分は。自分達はもう一度殺されることになる。
 
「嘘…だろ」
 
 そんな。そんなことが。
 火神が青ざめた、その時だった。
 
「やっぱり、ボクの番ということですね」
 
 はっとして顔を上げる。今のは。
 
「正直、あなたが何者かであるかなんて興味はありません。ボクが知りたいの
はあなたが“誰か”ということです」
 
 間違いない。黒子の声だ。黒子が、どこかで誰かと話しているらしい。
 火神は慌てて立ち上がる。
 
「そしてボク達はみんな、どうしようもないほど負けず嫌いなんです。挑まれ
た勝負がどんなものであれ、負ける気なんかさらさらないんですよ」
 
 黒子の声は静かなものだった。しかし、相棒を務める自分には分かる。黒子
は明らかに怒っていた。否、こんなに激怒している彼は初めて見るかもしれな
い。
 声は左廊下突き当たりの窓のあたりから聞こえるようだった。火神は“第一
夜”の事件を思い出して冷や汗をかく。あの窓の下で、黄瀬は死んでいたのだ。
まさか、今度はいきなり黒子が?
 
−−させるかよ!
 
 火神は走るスピードを早めた。用具倉庫の前で。冷たくなって転がっていた
黒子を思い出した。第一夜で、用具倉庫に押し込められるようにして殺されて
いた黒子。その姿を見た瞬間頭が真っ白になった。怒りより悲しみより、もう
何も分からなくて頭が働かなくなって。感情は、後になって押し寄せてきて。
 もう二度と。二度とあんな思いは。
 
「誰なんですか」
 
 火神は気付かなかった。
 本来この屋敷の構造上、
【玄関ホールにいた場合、一階の廊下の物音は聞こえず、
二階の物音も中央の儀式部屋から離れれば離れるほど聞こえぬくくなる。
窓付近の物音は遺体が落下するほどの音でもまず聞こえない。】 
 つまり
【玄関ホールにいる火神が窓際で話す黒子の声を拾うことは
まず有り得ないのだ。
ただでさえ黒子の声は小さい傾向にあるというのに。】
 火神は知らない。第二夜における自分の運命は既に本の中に描かれてしまっ
ていることを。
【黒子の声以外聞こえない、何故だか他の誰一人見当たらない
この空間が既に幻想の世界であるということを。】
 
「今からボクを殺す、あなたは誰ですか」
 
 黒子がそう何者かに尋ねるのと、階段を駆けたあがった火神が黒子の姿をと
らえて駆け出すのは同時だった。
 誰かがいる。黒子の言葉を受けて、誰かが嗤っている。ぎょっとした。その
何者かの手に握られた物体が、月明かりにぎらりと光ったからだ。
 あれは−−第一夜で幾度となく見たものと同じ。
 黄瀬の、伊月の、高尾の、日向の、リコの、緑間の−−そして黒子の。胸を
刺し貫き、命を奪った、凶器。
 
「やめろぉぉぉっ!」
 
 襲撃者が、ナイフを振り上げた瞬間。火神は絶叫し、飛び出していた。
 
 
 
 ***
 
 
 
1:
とりあえず新スレ立てさせて貰った。
初めて来た者はこちらの旧スレで先に確認してからコメントして欲しい。
 
つ 【キセキファン】彼らが魔女に浚われた【力を貸して】
 
今更身バレだのなんだのとは言わない
僕はキセキの世代元主将、赤司征十郎だ。
スレタイにある通り仲間達と魔女に浚われた
皆の力が必要だ。力を貸して欲しい
 
2:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
3:ねぇあたし、トイレの名無しさん
赤司様ああああああっ!
 
4:ねぇあたし、トイレの名無しさん
良かったあああああ!
 
5:ねぇあたし、トイレの名無しさん
わたし前スレにいたよ!
最後の方で突然わけわかんないことになって画面の前でパニクってた!
 
6:ねぇあたし、トイレの名無しさん
ご無事でしたか赤様(うる
 
7:ねぇあたし、トイレの名無しさん
>>6
つ【ティッシュ】
とやろうとしたけど俺の分しかなかったわ…
 
うわああああん赤様良かったですううう!
 
8:ねぇあたし、トイレの名無しさん
泣きすぎてティッシュ足りねぇぇぇっ!
 
9:ねぇあたし、トイレの名無しさん
俺もおおおおっ!
 
10:ねぇあたし、トイレの名無しさん
びえええええん!
 
11:
みんな落ち着きなよ
喜んでくれるのは嬉しいけど話進まないだろ(^_^;)
 
とりあえず状況確認をしたい
今現実の時間は何時だ?
 
12:ねぇあたし、トイレの名無しさん
お昼の十一時です赤様
 
13:ねぇあたし、トイレの名無しさん
ここまで音沙汰ないからほんともう駄目かと…
 
14:ねぇあたし、トイレの名無しさん
E監督どうしたかな
旧スレの最後仮眠をとるって落ちてたけど
 
15:ねぇあたし、トイレの名無しさん
まだ新スレの存在に気付いてない可能性があるな…
 
16:ねぇあたし、トイレの名無しさん
天M達は授業なうだろ
ちゃんと学生やってるならば
 
17:ねぇあたし、トイレの名無しさん
うん兄貴みたいにサボってなければ( ̄∀ ̄)
 
18:ねぇあたし、トイレの名無しさん
だな
兄貴みたいに屋上で寝てなければ(o^^o)
 
19:
…青峰のサボり癖はどこまで有名なんだと言いたい、キセキの恥晒すなよまっ
たく
なんかムカついたから青峰の尻蹴っといた
涙目で「なにすんだよ!」って言っても青峰じゃ可愛くないよ
 
20:ねぇあたし、トイレの名無しさん
赤様wwww
 
21:ねぇあたし、トイレの名無しさん
良かった安定の赤様だwwww
 
22:ねぇあたし、トイレの名無しさん
通常運転でなによりwwww
 
23:ねぇあたし、トイレの名無しさん
赤様は黒っちと漫才コンビを組めばいいんじゃないかなwwww
 
24:ねぇあたし、トイレの名無しさん
>>23
なにその最強の組み合わせwwww
 
25:
漫才か…残念だけど僕には向いてないな
黄瀬と黄瀬の学校の部長さんがさりげなく名コンビだと思うけど
あと緑間と鷹もいいかもね
 
さて本題だ
僕らは無事…と言いたいけど実はそうでもないみたいでね
多分、昨夜僕も含めた全員が死んでる
 
26:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
27:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
28:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
29:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
30:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
31:ねぇあたし、トイレの名無しさん
( ゜д゜ )
 
32:ねぇあたし、トイレの名無しさん
ほ…へ?
 
33:ねぇあたし、トイレの名無しさん
全員死んで…え?
 
34:ねぇあたし、トイレの名無しさん
だって今赤司様生きて書き込んで…ってああああああ!
 
35:ねぇあたし、トイレの名無しさん
まさか
第一巻の事件が終わって次が始まっちゃったのか!?
 
36:ねぇあたし、トイレの名無しさん
だから十一人全員生き返った!?
 
37:ねぇあたし、トイレの名無しさん
マジかよおおおおっ!?
 
38:
まさにその通りだと思うよ
昨晩…いや僕にとってはついさっきのことなんだけど
青峰、火神と一緒に玄関ホールにいて
午前零時の鐘が鳴ったところまでは覚えてるんだ
だけどそれ以降の記憶が一切ない
 
気がついたら、玄関ホールで倒れてて
しかも死んだはずのみんなが一緒にいる
 
39:ねぇあたし、トイレの名無しさん
それわ…
 
40:ねぇあたし、トイレの名無しさん
生き返ったのを喜んでいいのか悲しんでいいのか
 
41:ねぇあたし、トイレの名無しさん
やっぱり事件は繰り返すのか…
 
42:E監督
すまない遅刻した!
 
43:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
44:ねぇあたし、トイレの名無しさん
E監督ううううっ!
 
45:ねぇあたし、トイレの名無しさん
良かったスレに気付いてくれて!
 
46:ねぇあたし、トイレの名無しさん
頼もしい味方再び!
 
47:E監督
みんな大袈裟だなぁf^_^;
 
とりあえず俺からも報告したい
聖に手に入れて貰った『幻想の裏側・第一巻』だけど
 
ページが最後まで書き込まれてて、赤字も増えてる
赤の手元のはどうだ?
 
48:
お帰りなさいE監督
あなたがいて下さるととても助かります
 
僕達の手元にある本も同じ状況ですが
この内容…滅茶苦茶ですね
 
49:ねぇあたし、トイレの名無しさん
滅茶苦茶?
 
50:
早い話、最終的に僕と火神と青峰は、魔女の魔法の力で焼き殺されたことに
なってる
ってかよく見たら僕達だけじゃない
黄瀬とか緑間あたりも魔女に殺されたみたいな描写で書かれてるんだけど
何だよこの三流ファンタジーは
 
51:ねぇあたし、トイレの名無しさん
事実がファンタジーに置き換えられてるってことか?
 
52:ねぇあたし、トイレの名無しさん
いやでも犯人は魔女なんだし
本当に魔法で殺されたのかも…
 
53:ねぇあたし、トイレの名無しさん
>>52
それじゃ本末転倒なんだよお前もっぺん旧スレ見てこいよ
 
54:ねぇあたし、トイレの名無しさん
この事件は、人間のトリックで行われてるってあったもんな
 
55:ねぇあたし、トイレの名無しさん
まあ…人間がやってるにしちゃ納得いかないとこもあったけど
 
56:E監督
でも赤字は絶対だ
なら月先輩の密室トリックも紫の消失も、全部人間に可能な方法で行われたに
違いない
当然一番最後の赤司達だって魔女に魔法で殺されたなんてはずがないんだ
 
とりあえず赤司、今玄関ホールには全員いるのか?
 
57:
>>E監督
いいえ
 
悔しいですが先手を打たれました
今玄関ホールには僕含め八人
 
既に三人行方不明です
 
 
 
NEXT
 

 

結局だれもが同じ場所へ逝くのだから。