それだけで
立ち上がる理由は、充分なんだろう。
 
 
 
 
 
【キセキファン】
彼らが魔女に浚われた
・第二夜・16
【力を貸して】
 
 
 
 
 
 
「円堂監督!聖也先輩!」
 
 ぱたぱたとミーティングルームに天馬達が駆けてくる。まるで小動物みたい
で超可愛いお持ち帰りしたい、と聖也は思いかけ、ぶんぶんと首を振って煩悩
を振り払った。変態モードに入ってる場合じゃない。hshsprprはこの
件が終わったあとでもできるのだ問題ない(それもなんかおかしいからな b
y円堂)。
 昼休み。皆にメールをしたところ“セクハラしないなら行きます”的な返信
ばかり返ってきて半泣きになった聖也である。もう少し欲望を自重すべきと分
かっているが自分の残念な理性も理解してるわけで。そろそろみんなが慣れて
くれればいいのにという問題外なことを考える。ちょっとスキンシップが派手
なだけだ、ああそうだろう!
「聖也、真面目にやれ。殴るぞ」
「殴った後で言うなよおおおっ!」
 円堂にぱこーん!と後頭部をハリセンではたかれた。自分の頭ながらとても
いい音である。それにしても昔からそうだが、何で円堂には自分がhshsp
rprしてることがバレるんだろう。エスパーか?エスパーなのか?
 
「天馬達に集まって貰ったのは他でもない。この事件に、決着をつける為だ」
 
 集まった天馬達サッカー部員達を前に、円堂が切り出す。キセキの世代や誠
凛バスケ部員達が巻き込まれた事件。サッカー部員達はみんな把握している。
今回の敵が円堂にとって因縁の相手であるということも。
 
「決着をつけるって言っても…俺達に何が出来るんです?本の中にも入れない
し、そもそも事件の謎を解かないと魔女は倒せないんでしょう?」
 
 速水がおずおずと手を上げて発言する。正論だった。自分達がいくら理屈を
こね回しても、今の状態ではアルルネシアと直接戦えるのは赤司一人。自分達
はその場に出向くことさえできない。
 そして直接対峙することが出来たとしても。第一夜及び第二夜の犯人を暴く
ことが出来なければ、この事件を終わらせることはできないのだ。
「その通りだ速水。でも実は、本の世界に飛ぶ方法が全くない訳じゃないんだ」
「え!?
「化身の力を集約して、結界をこじあける」
 化身の力は召喚獣の力に匹敵する。一体だけでも莫大なパワーを誇るが、今
や雷門の化身使いは一人二人ではない。アルルネシアが相手であるため結界を
完全に打ち破ることまでは出来ないだろうが、隙間をこじ開けるくらいなら不
可能じゃないはずなのだ。
 問題は。こじ開けられても恐らく通れるのは一人程度が限界ということと。
今すぐには無理ということだ。
 
「赤き真実は絶対だ。それは事件を解くヒントであると同時に、時に俺達みた
いな魔術師の枷にもなる」
 
 聖也は言いながらパソコンのファイルを開き、プロジェクターを通して皆に
公開した。投影されたのは第二夜の赤き真実をまとめたファイルである。
 
【犯人は人間に化けた魔女である。】
【この洋館のいる人数は十一人以下である。】
【魔女は人間のトリックと力で犯行を行う。装飾された幻想の裏側に真実はあ
る。】
【魔女を見つけ出さない限り、誰一人現実に帰還することはできず、零時には
必ず全員が死亡する】
 
【全ての夜、全ての事件はノックス十戒に背かない】
【探偵は赤司征十郎であり、赤司は一切の殺人を犯さず意図的に手を貸すこと
もない】
【高尾和成は二階で刺された】
 
【誰かが外に出たのは、探索時の赤司と紫原のみ。他の人間は生死問わず外に
は一度も出ていない】
【食堂の通路を通った人間はあわせて三人である。ちなみに鷹は生死問わず通
っていない】
【全ての夜、事件においてピッキングによる密室工作は全て無効である】
【日向は黄瀬を殺しておらず、また黄瀬も日向を殺していない】
【火神は黒子を殺しておらず、また黒子も火神を殺していない】
 
「ネックなのはこの中の二個目の赤だ。【この洋館にいる人数は十一人以下で
ある】。俺達の誰かが空間移動して屋敷の中に飛んでみろ、どう見たって十二
人目になっちまう。読み違えてたが、遺体も一人と数えるみたいだからな」
 
 十二人目が現れたら赤き真実に矛盾する。つまりあってはならないこと。こ
れが結界を強固に守っている。この赤がある限り、自分達は誰一人、屋敷の中
に飛ぶことが出来ないのだ。
 
「でも…それじゃあどうにもならないじゃないですか!赤き真実は誰にも撤回
できないんでしょう!?
 
 天馬が悲鳴に近い声を上げる。その隣で、剣城がはっとしたように顔を上げ
た。
「場所…」
「え?」
【洋館にいる人数が十一人以下】というのはつまり、洋館限界の赤だ。洋館
以外の場所では完全に無効化される…!」
 さすが剣城。気付いたらしい。円堂が満足そうな顔で頷くのが見えた。
 
「第三夜!最初の事件が発生した後で赤司にはチェックをかけてもらう!する
と赤司のみ場所が転移される…アルルネシアの支配する大聖堂へ!」
 
 幻想法廷。そこが決着の場だ。アルルネシアの主張する魔女幻想を赤司が打
ち破られるかどうか、審判を問われる場所。そこはもう“事件現場”の洋館で
はない。いくらでも人数を増やすことが可能だ。
 赤司がアルルネシアと共に幻想法廷に移動した時こそ、自分達が結界をこじ
あける唯一無二の好機である。
 
「待って下さい!赤司さんも円堂さんもまだ事件の謎は解けてない筈…!その
状態でチェックメイトを宣言するなんてあまりに危険です!第一、結界破りが
成功するかもまだ分からないのに…!」
 
 神童が抗議の声を上げる。
「もう少し手がかりを増やしてからでは駄目なんですか!?せめて第三夜が終わ
るまででは…」
「間に合わないんだよそれじゃ。よく思い出せ神童。旧スレの103が言ってた
だろ。第四夜…第四巻はまだ発売されてない上、解決編なんだって」
 宥めながら説明する。神童も気付いたようで、あ、と目を見開いた。
 事件はもう第三夜で終わってしまう。第三夜までに解決の糸口を見つけられ
なければ、恐らくその時点でゲームオーバーだ。
 空間の狭間に突き落とされるか、魔女に負けて玩具にされるか。いずれにせ
よ嫌な予感しかしない。
 
「時間がない。…答えが分かってなくても戦うしかねぇんだ。魔女と駆け引き
をして出来うる限りの赤を引き出し、円堂が助けに向かうまでの時間を稼ぐ。
こいつができんのは赤司だけだ」
 
 聖也は携帯を見る。くろちゃんの報告を見ると、いつの間にか二階の探索が
終わっていたようだ。今までのペースを考えると、皆の部活が終わる頃第三夜
も始まるだろう。
 円堂が立ち上がり、皆を鼓舞するべき拳を上げた。
「赤司や黒子達を助ける為、リスキーでもこれが最善の策だ。みんな、力を貸
して欲しい!」
「はいっ!」
 部員達全員の声が一つになった。やはり皆をまとめる円堂のキャプテンシー
は凄い。惚れそうマジで、とついニヤけてしまう聖也である。
 
−−待ってろよ赤司、みんな!
 
 聖也は携帯を見つめて思う。
 絶対に助ける。子供を護るのは自分達大人の役目なのだから。
 
 
 
 ***
 
 
 
 
276:ねぇあたし、トイレの名無しさん
そういやE監督と聖先輩は落ちたのか?
 
277:ねぇあたし、トイレの名無しさん
まさかまた変なことに巻き込まれたてんじゃなかろうな
 
278:ねぇあたし、トイレの名無しさん
>>277
だからそーゆフラグ立てるなと…!
 
279:ねぇあたし、トイレの名無しさん
これ以上はもう俺ら的にも限界だっての…
 
230:E監督
ただいま
すまない、部のみんなと話し合ってたから少し落ちてた
 
231:ねぇあたし、トイレの名無しさん
監督!
 
232:ねぇあたし、トイレの名無しさん
良かった!特に何かあったわけじゃないんだな!
 
233:ねぇあたし、トイレの名無しさん
ほら277、教主様に土下座するんだ!
 
234:ねぇあたし、トイレの277さん
どうもすんませんっしたああああああああああorz=====3ズザザザザザ
 
235:E監督
Σえ?え?なんで謝られてるの?
つか教主様ってなんだ(・◇・)
 
236:聖先輩@どうどう
あーみんな、一つ言っとく
Eのやつそーゆー自覚ゼロだから
教主様とか言っても通じないからな
 
237:ねぇあたし、トイレの名無しさん
E監督が無自覚タラシだった件
惚れた
 
238:ねぇあたし、トイレの名無しさん
濡れた
 
239:ねぇあたし、トイレの名無しさん
漏れた
 
240:ねぇあたし、トイレの名無しさん
勃った
 
241:
>>238240
君達まとめて鋏の雨に降られればいいよ
 
E監督、とりあえず二階の探索が終わって今紫原と玄関ホールです
もう時間がありません、急いでログを遡って頂けると有り難いのですが
 
242:E監督
今見てきたところだ
二階でいろいろ見つかったみたいだな
分かりやすく地図引っ張ってきた
 
   |  |儀式|  |  |  |
☆部屋|部屋|部屋|部屋|部屋|物置|
−− −− − −−− − −
 |              |
 |              |
窓    二階          窓
 |              |
 |              |
−−−−−  −−−−−− −−−−
     階段    |ダンスホール|
 
二階の左窓の前でJK監督
☆部屋で緑、それぞれ遺体を発見した
二人とも皆と同じくナイフで胸刺されて死亡していた、そうだな?
 
243:
はい、それであってます
ちなみに時刻は十一時十五分くらいです
 
244:ねぇあたし、トイレの名無しさん
でもって火や黒の遺体に異常はなし
あと他の部屋で見つかったもんも特になし…と
 
245:ねぇあたし、トイレの名無しさん
>>244
いや大事なとこいろいろ省くなよ
・JK監督の服に縛られたみたいな後があって、ややスカートが黒っぽく汚れ
てた
・緑の左手のテーピングはやっぱりなくなってた
・物置に黒く汚れたロープみたいなのを発見
 
246:ねぇあたし、トイレの名無しさん
>>245
まとめ乙
そうだったそうだった
 
247:聖先輩@礼
>>245
ありがとよ
 
まあ結論として、紫原と赤司以外の全員の死亡を確認してきたわけだな?
 
248:
そーだよ
 
みんなしんじゃった
でもって
このままだと俺たちもしぬんだよね?
 
249:ねぇあたし、トイレの名無しさん
紫…
 
250:ねぇあたし、トイレの名無しさん
あと時間はどれくらいだ?
 
251:
零時まで残り三十分を切った
残り時間でなんとか出来ることをしよう
 
 
 
NEXT
 

 

孤独にて飽和せよ。