振り降ろせ、
その願いを。
 
 
 
 
 
【キセキファン】
彼らが魔女に浚われた
・第二夜・9
【力を貸して】
 
 
 
 
 
 
 
718:ねぇあたし、トイレの名無しさん
つか真面目な話
…ピッキングはないと思っていいんだよな?
 
719:ねぇあたし、トイレの名無しさん
…それできたら今までの密室うんぬんの推理が全部パァだぞ718
ミステリーとしてアカンやろ
 
720:E監督
そうだな
アルルネシアの奴が宣言忘れてるようだから代わりに俺が宣言させてもらう
 
【第一も第二夜もそれ以降のゲーム全てでピッキング行為は無意味。
ピッキングにて外から鍵をかけたり開けたりは不可能だ】
 
721:ねぇあたし、トイレの名無しさん
 
722:
ちょっと待って下さい
何故ゲームマスターじゃないE監督が赤を使えるんですか
 
723:ねぇあたし、トイレの名無しさん
E監督の書き込み、【】の文字が赤くなってる…!
 
724:E監督
>>緑間
確かに俺はゲームマスターじゃない
でも魔術師だ、本を通じてゲーム盤の根本的なルールを読み取るくらいはでき
 
725:聖先輩@赤使用
俺からも補足させてもらうぞ
 
【全ての部屋、ドア、窓において、外から施錠をすることは不可能である。
またつっかえ棒の類についても同様である。
これは全ての夜と事件に適用される】
 
726:ねぇあたし、トイレの名無しさん
ちょ、聖なんでそれもっと早く言わねぇ!?
 
727:ねぇあたし、トイレの名無しさん
言うのが遅いってばよ…!
 
728:ねぇあたし、トイレの名無しさん
どうやって外から鍵かけようかとか真面目に考えてた俺が馬鹿みたいじゃねぇ
か!
 
729:ねぇあたし、トイレの名無しさん
まあ確かにそれ出来ちゃうとミステリー的に微妙になるけども…!
 
730:聖先輩@しょぼんぬ
すまぬ(´・ω・`)
それより赤、この後どうすんだ?
 
731:
一つ思ったんだけど
第一夜で僕らは事件のたびわざわざ一階玄関ホールに戻ってきていた
しかし、今から思うとそれがまずかったのかもしれない
 
辛いが、今の俺と黄瀬と紫原と日主将の組み合わせのまま探索を続けることに
する
 
732:ねぇあたし、トイレの名無しさん
そうか…
 
733:ねぇあたし、トイレの名無しさん
もしかしたら二階にまだ痕跡とかあるかもしれないもんな
 
734:ねぇあたし、トイレの名無しさん
二階に誰か潜んでるかもしれないしな!
 
735:ねぇあたし、トイレの名無しさん
>>734
いやそれはないだろ…だってもう行方不明な奴は全員見つかったぞ
行方不明だったのは鷹と黒と火だ
でもって探索班の赤と紫と黄と日以外の四人(月、JK監督、緑間、青峰)は
みんな玄関ホールにいるんだから
 
736:ねぇあたし、トイレの名無しさん
そういやそうか…(-.-;)
 
737:
犯人はいないかもしれないが、俺も赤の案に賛成なのだよ
特に倉庫内のブレーカーはしっかり調べた方がいいのだよ
 
738:
了解っス
すみません落ち着いたんで俺も行くっス
 
739:ねぇあたし、トイレの名無しさん
黄…無理すんなよ
 
740:
>>739
ありがとうッス
大丈夫ッスよ。俺は、大丈夫
 
食堂に繋がる☆部屋、その隣部屋、窓の下、儀式部屋は探索終わったッス
次は右廊下側の部屋を調べるッスよ
 
じゃ
 
741:ねぇあたし、トイレの名無しさん
…本当に大丈夫なのか
 
742:ねぇあたし、トイレの名無しさん
大丈夫って繰り返す奴ほど大丈夫じゃないもんだよな…
 
743:ねぇあたし、トイレの名無しさん
ところでさ
火と黒は鷹より先に死んでたってことでFA?
 
744:ねぇあたし、トイレの名無しさん
どう・・・だろ。
 
745:ねぇあたし、トイレの名無しさん
まあ火達が自殺だったらあれだけど
仮に他殺だとしたら、殺せたの八時の集合より前だろ
あー…玄関ホールに待機してた奴らが三人とも犯人だったら別だけど
 
746:E監督
儀式部屋は玄関ホールから丸見えの位置にあるからな
ただ、火と黒は八時の集合前に消えていたわけだから、殺すチャンスは全員に
あったと思っていいと思う
 
問題はまたしても密室殺人になっちゃったわけだけど
 
747:ねぇあたし、トイレの名無しさん
一つ気になったんだけどさ
 
748:ねぇあたし、トイレの名無しさん
どうした747
 
749:ねぇあたし、トイレの747さん
いやさ
何で今回、犯人は密室作る時鍵をかけなかったのかな
今回ドアの鍵は開いてたのに、つっかえ棒で部屋を封印してたわけだろ?
 
750:ねぇあたし、トイレの名無しさん
そういうばそうだな
今回も普通に鍵かけてた方が、密室としては美しかった気がすんだけど
 
751:聖先輩@カップめんうまうま
ちょっと真面目に考えてみるか
大抵こーゆーのには理由があんだよな
鍵をかけなかったんじゃなくて、かけられない理由があったのかもしれない
 
752:ねぇあたし、トイレの名無しさん
一見カッコイいこと言ってっけど聖お前今度はカップめん食ってんのかよ…
腹減っただろうがああああっ!
 
753:ねぇあたし、トイレの名無しさん
よこせゴラアアアアアァ!!!
 
754:聖先輩@プギャー
うわなにするやめ
 
俺のコンソメ抹茶キャラメルマヨネーズ味いいいっ!
 
755:ねぇあたし、トイレの名無しさん
何そのマズそうな味!?
 
756:ねぇあたし、トイレの名無しさん
カオスっつーか長いわああああっ!
 
 
 
 ***
 
 
 
 頭を働かせるのは得意じゃない。というかもはや問題外のレベルだ。青峰は
残念ながら、自分の頭の出来がアレなのをそれなりには自覚していた。それな
りに、だが。
 以前テストで赤点をとり課題を出されて。“食塩12gを水320gに溶かした
時濃度は何%になるでしょう”的な問題で“ちょびっとしょっぱくなる”と真
面目に答えたところ教師に本気でどつかれた記憶がある(その話を今吉主将に
話したら“そもそも高校生の課題で濃度出されるのがおかしいと思わなアカン
やろ”と生ぬるい笑みを浮かべられた。げせぬ)。
 まあ今回の場合。そんな小難しい数学やら物理やらが得意だからといって、
推理が出来るとは限らないだろうが。少なくとも、そういった勉強が得意な奴
らは自分よりは推理に長けている、と思う。適材適所というやつだ。餅は餅屋
だ(さっきなんか緑間が言っていたのでそういう意味なのだろう)
 というわけで青峰はしょっぱなから、考えることを放棄していた。推理など、
犯人探しなど得意な奴に任せておけばいい。自分が何をしたって何を考えたっ
てどうにもならないと−−そう思っていたのである。
 しかし。
 
−−テツ…火神…。
 
 友人達が、死んだ。高尾の時は−−薄情な言い方だが、そこまで親しくない
相手だった為にそこまで感情は動かなかったのだが。彼等は違う。かつての相
棒と、自分もそれなりに認めていたライバルだ。関係が良好とは言い難かった
かもしれないが、彼等とのバスケが楽しかったのは間違いない。その二人を、
またしてもこんな形で失うことになるだなんて。
 第二夜の事件が終われば、再び死者は全員蘇る、という。というか零時の時
点で全員が何らかの形で死ぬことになるのだそうな。第一夜の記憶が中途半端
に途切れている以上、きっと自分も一度死んでいるのだろう。半信半疑だった
が、信じておくしかないのが現状だった。
 つまり。ここで悲しむことにも、意味はないということになる。また生き返
り、事件は繰り返すのだから−−いちいち感情を動かしたところでどうにもな
らない、と。青峰自身そうすべきなのは分かっていた。どうしたって全員死ぬ。
誰かに殺される。それが遅いか早いかの違いだけ。割り切らなければ心が保た
ないと、理解していた。
 だが。だからといって感情を容易くセーブ出来るほど、青峰は大人ではない。
頭の中はもうごちゃごちゃだ。悲しいのか悔しいのか、苦しいのか腹立たしい
のかもうよく分からない。その相手が誰か分からないせいで、感情をぶつける
ことさえままならない。
 
−−何でだ。何で俺ら、こんな目に遭ってんだよ。
 
 理不尽。ただその一言に尽きる。
 
−−犯人は誰だ。誰がテツ達を殺したっていうんだよ。
 
 ぐるり、と玄関ホールを見回す。青峰以外に今玄関ホールにいるのは三人だ。
緑間、伊月、リコ。魔女が化けた偽物−−犯人が十一人の中にいるのであれば、
この三人もまた当然容疑者である筈である。この中に、犯人がいるのだろうか。
黒子達をあんな目に遭わせて平気な顔をしている奴が、この中に?
 本当ならば。もっと疑心暗鬼になって互いを疑いあい罵りあう事態になって
も良い筈だ。辛うじてそうなっていないのは、赤司と日向達がいるせいなのだ
ろうなと思う。年長者である日向が本気で取り乱したのは、第一夜で伊月の遺
体を発見した時だけだった。それ以外は涙を浮かべて唇を噛み締めることこそ
あれ、パニックになって皆を無粋に怒鳴るようなことはなかった。それはリコ
や伊月にも言えることだ。
 年長者が落ち着いているだけで、場の空気がなんとか保たれることは少なく
ない。そういった意味で自分は今まで無意識のうちに、今吉に助けられていた
ということに気付く。胡散臭さNo.1のキャプテンだったが、皆に慕われてい
たのは確かだ。青峰のせいで暴力沙汰になりかねない時は何度もあったが、そ
のたび今吉の一言で場が沈静化させられていたように思う。
 もしかしたら彼も赤司と同じく、魔術師であったのかもしれない。頭脳派か
ら極めて遠い青峰だが、魔術師と呼ばれる人間がいかようなものであるかは身
を持って知らされていた。良くも悪くも赤司の行動一つ、心一つで皆が誘導さ
れて支配されていく。今回も、その赤司の“魔法”がなんとか効いているのは
間違いない。だからどうにか、最悪の事態を免れている。少なくとも、今はま
だ。
 
−−けどそれも…いつまで保つかどうか。
 
 全員、沈黙したまま動かない。緑間は暖炉の脇で携帯を睨んだまま突っ立っ
ている。リコはソファーに座ったままうなだれている。伊月は階段の上をじっ
と睨んで動かない。そして青峰も青峰で、ソファーの横でうろうろ歩き回るば
かりだ。
 ただ待っているだけではいけない気がする。赤司達が探索してくれている間、
自分達にもすべき事があるのではないか。そう思うのに、頭が回らない。
 どうしよう。どうすれば。
 
「今」
 
 不意に。リコが顔を上げ、玄関の扉を見た。
 
「何か音…しなかった?」
 
 音?青峰は訝しげに思い、近寄ろうとする。が、唐突に手首を誰かに掴まれ
た。伊月だ。
 
「待て、青峰。何か…」
 
 何か、来る。伊月が険しい顔でそう言った瞬間だった。
 扉が勢いよく、開け放たれた。
 
 
 
NEXT
 

 

可視にて幻惑せよ。