識れ。 そこに大地はある。
【キセキファン】 彼らが魔女に浚われた ・最終夜・22 【力を貸して】
世界が反転する。円堂に思い切り腕を引っ張りあげられた瞬間、赤司の視界 は晴れていた。暗く、影の蠢く廊下ではなく、厳かな大聖堂へ。 此処は−−幻想法廷?
−−え?でも僕は…アルルネシアに串刺しにされて…。
アルルネシアの手で赤き真実で滅多刺しにされ、幻想を見せられ、精神を破 壊されかかっていたのは分かる。だが、ならなぜ自分は戻ってこれたのか?な ぜさっきまで自分を貫いていた赤き矢が床に散らばっているのか? そして何故。円堂が目の前にいて、赤司の手を握っているのだろう。
「すまない、遅くなった」
円堂は心底申し訳なさそうに眉を潜めた。 「説明するより見て貰った方が早いな。ほら」 「は…はい」 戸惑いながらも手渡された携帯を開く。そこに表示されていたのはくろちゃ んねるだ。此処にきて初めて赤司は、自分とアルルネシアの対決が動画で生放 送されていたことを知る。アルルネシアにボコボコにやられる様を衆目に晒し たと知り、思わず額を押さえた。ああ、情けない。 だが羞恥はすぐ驚きへと変わる。円堂はずっと自分を助けに来る為に頑張っ てくれていた。そしてスレの住人達もずっと推理を続けてくれていたのだ。 そしてスレッドに新たに現れた救世主−−ハンドルネーム、桜。すぐに誰だ か思い至った。青峰のチームメイトの一年生レギュラー、SGの桜井良だ。確 かに彼からは魔法の気配がしていたけれど−−まさかラムダデルタの“お気に 入り”であったとは。 ざっくりとだが流れは理解した。そして知る。どうして自分が串刺しから、 アルルネシアの精神攻撃から解放されたのかを。 円堂は至ったのだ。全ての事件の、真実に。
「嘘でしょっ…あの結界をどうやって破ったっていうの!?外側からだけでは無 理だった筈よ!」
今まで余裕を崩さなかったアルルネシアが、明らかに動揺した様子で叫ぶ。 それを、円堂は冷ややかな眼で見つめた。 「お前には理解できないだろうけどな。…俺達には仲間がいるんだ。一人一人 の力だけでは戦えなくても…結束すれば奇跡さえ起こしてみせる。そんな仲間 がな」 「ふん…また絆?仲間?くっだんないわね!」 「くだらないかどうか試してみるか?…まあ分かってるだろうけどな。何で赤 司の傷が癒えていて、刺さっていた矢が抜けたんだと思う?」 ぐっと言葉に詰まる魔女。彼女も理解せざるをえなかったのだろう。赤司が 解放された理由。それは円堂が、アルルネシアの仕掛けた全ての罠を打ち破っ たからに他ならないということを。
「浄罪の魔術師・円堂守の名において赤き真実を行使する。【俺にはお前の檻 を全て打ち砕く推理が展開出来る!】俺一人じゃない…赤司や桜井、サッカー 部のみんなにバスケ部のみんな。みんなが一緒に戦ってくれたお陰でな!」
アルルネシアにとっては不意打ちに等しいものだったのだろう。円堂の放っ た赤き真実を、魔女はすんでのところで杖で払った。 今のはただの牽制。赤司にもそれはわかる。本命の攻撃は、ここからだ。 「…いいわ、聞かせて貰おうじゃない。あなたの推理とやらをね!まずはさっ き手をつけなかった第三夜からいかせて貰うわよ!」 「いいだろう」 そうだ。第三夜。赤司はその推理を展開する以前にアルルネシアの罠に嵌ま り、身動きを封じられてしまった。だが、よくよく考えれば第三夜にもまたい かんなくトラップは仕掛けられていたのだ。 あの時赤司はまだ、犯人は火神、黒子、緑間の三人だと思っていた。だから、 誰の死にも余計な疑いは抱かなかった。 八時の時点で、行方不明だったのは四人いる。黒子、日向、リコ、緑間だ。 そして残るメンバーは皆玄関ホールにいた八時過ぎに、日向とリコから内線電 話がかかってくる。 二人は食堂に閉じ込められていて、日向とリコはそこから電話をかけてきた。 電話には二人ともが出たし、電話は赤司自らが出たのでこれは間違いない。電 話が日向からリコへ変わった時、二人は第三者に襲われて電話を切った。リコ の言が正しいのなら彼女を襲ったのは明らかに日向以外の何者かである。 実際二人は後々二人ともが食堂で死亡しているのが見つかっている。だから 誰も二人の電話の内容を疑わなかった。二人が襲われたなら当然、襲った犯人 は玄関ホールにいなかった残る二人のどちらか。緑間か黒子、あるいはその両 方である。 多分その時既に赤司の考えは読まれていたのだろう。推理を誘導されたとし か思えない。赤司が疑っている二人だけが容疑者という、あまりにも都合の良 い展開だったのだから。 しかし、桜井は赤字で宣言した。【日向とリコの電話の時黒子は既に死亡し ていて、さらに黒子は全ての夜において殺人を犯していないということを。】 黒子が犯人という前提そのものがここで覆ったのである。 さらにはアルルネシアから提示された赤字でも、赤司の推理は否定されてい る。【緑間もまた電話の時には死亡しとおり、かつ日向とリコの死に関わって いないのだという。】 読者諸君には既におわかりだろう。ここで大きな矛盾が発生した。【日向と リコは食堂から電話をかけてきた】、これも赤字確定済み。そして探偵である 赤司から言わせてもらえば【電話があった時行方不明四人以外のメンバー(赤 司、黄瀬、青峰、紫原、高尾、火神、伊月)の七人は全員玄関ホールにいたの は間違いない】。 そして【黒子と緑間は共に、日向とリコの死亡に関わってないばかりか電話 より前に死亡している。】【この屋敷には十二人以上の人間は存在しない。】 では一体誰が?誰が日向とリコを襲撃したのか?十一人の誰一人二人を襲えた 人間がいないではないか。 そしてもう一つ。伊月と火神に、左廊下の探索を任せた時だ。二人はそのま ま戻ってこなくて、伊月は後に遺体で発見された。そしてチェックメイトの直 前まで、火神が屋敷のいずこかで生存していることも赤で宣言されている。 赤司は火神も疑っていたわけで。伊月と火神を二人だけで探索に行かせたの も、火神が犯人であるという確証を得る為だった。火神が二人きりになった瞬 間伊月を殺して行方をくらましたに違いないと、そう決めうちしてかかってい たのである。 しかしここまで来ると、火神も本当に犯人グループの一人かどうかは怪しく なってくる。アルルネシアが赤司がチェック宣言するタイミングを読んでいた としたら?火神に疑いをかける為にわざと火神を生存させたとしたら? そもそもわざわざ生存を赤で記すのも奇妙な話だ。状況的に見て火神に疑い がかかるのは目に見えていたというのに。 さらに付け加えれば。アルルネシアは“火神が無事である”だなんて赤で言 ってない。火神が瀕死であろうと気絶させられていようと薬でラリッていよう と、生きてさえいれば“火神は生存している”という赤は出せてしまうのだ。 これが赤き真実の抜け道にして罠。恐ろしい点である。
「…まず食堂からかかってきた電話から詰めていこうか。アルルネシア、復唱 要求だ」
円堂は鋭くアルルネシアを睨みつけ、告げた。
「“日向とリコの二人は内線で赤司と通話中に襲撃された”。さあ、言ってみ ろ!」
そういうことか。赤司はハッとする。そして魔女を見た。 アルルネシアは明らかに青ざめた顔で、口を閉ざしていた。
***
536:名無しのミステリー作家 おい、みんな見ろ!
537:名無しのミステリー作家 E監督キタ!きたあああああっ!
538:名無しのミステリー作家 やたああああこれでかつるっ!
539:名無しのミステリー作家 相変わらず生放送見れてない俺にkwsk! E監督が助けにきたのか?
540:桜 E監督さんが今動画に映ってます! ただ助けに来ただけじゃない…串刺しにされてた赤司さんの体から矢が全部弾 き飛ばされました 赤司さんの怪我も治ってます
監督…真実を見つけられたんだ!
541:名無しのミステリー作家 なんだとううううっ!
542:名無しのミステリー作家 まぢでかああああっ!ありがお監督うううっ!
543:名無しのミステリー作家 E監督が真相に行き着いたから矢が抜けて…アルルネシアの術が解けたから赤 司様が目を覚ましたってことでFA?
544:名無しのミステリー作家 FA!
545:名無しのミステリー作家 FAAAAAA!
546:聖先輩@ちかれた ったくひやひやさせやがってー 誰か疲労困憊のぼくちゃんを労ってー!
547:名無しのミステリー作家 お前ら変態は無視だぞ
548:名無しのミステリー作家 そうだな構ってやるとドMを喜ばせるだけだもんな
549:名無しのミステリー作家 疲れてくれてるんなら今のところ安心だな よーし世界が平和なうちに俺らも推理すっぞー
550:名無しのミステリー作家 >>549
551:名無しのミステリー作家 >>549
552:名無しのミステリー作家 >>549
553:聖先輩@ぶわっ うん分かってた!こーゆー反応来るって知ってた! ボク強い子!泣かないったら泣かないんだからね!
ぶわっ(´;ω;`)
554:名無しのミステリー作家 こらそこwww 結局泣いてんじゃねぇかwww
555:名無しのミステリー作家 可愛い子ぶったってそうはいかねぇぞ!くろちゃんみんナメんな
つ【ハンカチ】
556:名無しのミステリー作家 555お前www 聖先輩相手にツンデレとかすごい勇気あんなwww
557:天M うっかり襲われないように注意してねー
つ【変態専用魔除けのお札】
558:聖先輩@ハンカチもらった 至福である(*´∀`*)
559:名無しのミステリー作家 おい聖先輩専用のお札作られちゃってるぞ…って、天M!?
560:名無しのミステリー作家 ご無沙汰天M! おつかれっ!
561:名無しのミステリー作家 お帰り天Mうううっ! 俺らの赤様のために本当にありがとほ!
562:名無しのミステリー作家 赤様に代わってお礼言う、ありがとう!
563:聖先輩@げせぬ あれなんでみんな俺の時とこんな反応違うの?あれー
564:天M >>聖先輩 日頃の行いの差というやつです 暫くそのまま地面に這いつくばってて下さい邪魔なので!
俺なんて全然大したことできてない 赤司さんが諦めないで頑張ってくれたから、桜さんが来てくれたからですよ
565:桜 そんなこと…ないですよ
566:名無しのミステリー作家 相変わらず謙虚だなおまいら
おっと、雑談はここまでにしようぜ E監督が推理を始めてるぞ!
567:名無しのミステリー作家 本当の犯人がようやく明らかになるのか…よっしゃ全裸待機っ!(バッ
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見つめて、見つめて。