結局誰もが、 いつかは死んでいくとしても。 【キセキファン】彼らが魔女に浚われた・最終夜・41【力を貸して】 負け、なんて。何故そんな表現を用いたのか、正直自分でもよく分かっては いない。伊月達が、ただ意地を張っているだけでないのは剣城とて分かってい る。彼らにも彼らなりの決意があって、そこに立っているということも。−−誰かの為なんかじゃない。全部全部、自分の為なんだってこと、忘れちゃ いけない。剣城が今この場に立っているのは、伊月達の自殺を止める為。しかしそれは 彼等の為ではなく、自分自身のエゴの為である事を履き違えてはならない。それを忘れて善意を無理矢理押しつけた時、人はただの醜い偽善者に成り下 がる。それはある種どんな悪より厄介で罪深いものだと剣城は思う。 身に覚えがあるから、尚更に。−−かつて俺は兄さんの足を治すという名目でフィフスセクターに入り、サッ カーを汚した。兄・優一の足を治す手術代。自分のせいで不自由な体になった兄に常に罪悪 感と負い目を感じていた剣城にとって、それは喉から手が出るほど欲しいお金 だった。フィフスセクターは多分、剣城の素質も環境も分かった上で声をかけ てきたのだろう。まだ幼かった剣城は誘われるまま大人達についていった。そ こでどんな地獄を見るかも知らないで。最終的には戦争にさえ応用出来るほどの力を持った、サッカーにおける召喚 魔法。それが化身だ。フィフスセクターの支援者は最初からそれが目的だった のかもしれない。剣城が受けた拷問とも虐待ともつかぬ凄まじい訓練は、サッ カーというよりむしろ軍事的意味合いが強かったように思う。あのまま組織に いたら自分は虐待死したか、あるいは人間兵器として戦争に駆り出されていた かもしれない。ぞっとする話だ。サッカーを支配する為の私兵・シード。その一員たる事を、剣城はずっと兄 に隠していた。優一の大好きなサッカーを間違った事に利用していると分かっ ていたからだ。しかしある時秘密はバレ、兄は涙ながらに弟を叱った。この足 を治して欲しいと、自分は一度でもお前に頼んだのか−−と。−−どんな痛みにも罪にも耐えてきた。兄さんの為だと言い聞かせて…それが 逆に兄さんを傷つけていたとは思いもしないで。あの時兄が怒ったのは単にサッカーだけが理由ではなかったと、今なら分か る。兄は兄の為に、自分を大切にしようとしなかった弟が悲しくて赦せなくて 怒ったのだ。愛しているから、叱ってくれたのだ。全部結局自分の為で、自分のエゴ。気付いた時剣城はショックを受けて−− 同時に、解放されたのだった。 自分はもう。自分の為に生きていいのだと。それで良かったのだと。「……俺は自分の為に、あなた達を止めます」 だから今、剣城は言うのだ。「あなた達もあなた達自身の為に、何かを選んでいい筈です」あの時自分がした後悔を、彼等にさせない為に。そして自分自身が再び後悔 することがないように。「身勝手を承知で言いますが。伊月さん達の為に言っているわけじゃありませ ん。…自分と周りが悲しまない為に言います」「…開き直るね」「嘘を吐き続けて自滅するよりマシですから。…皆さんが此処で死んだら、周 りを思い切り不幸にするだけで誰の為にもなりません。だって…皆さんは愛さ れてますから。愛する人が傷つくのを見て傷つかない人間なんていないんです よ」「そんな分かりきったこと、言われても困るんだけどな…」伊月は剣城の挑発的な口調(完全にわざとだった)にも一切反応しない。た だ穏やかに笑って返してくるばかり。冷静と言うより、なんだか空虚だ。 綺麗な笑顔なのに、何でこんなに胸を締め付けられるんだろう?「自分の為に選べと君は言ったね。まさしくその通りだ。俺は周りをほっぽっ て自分の為だけに死ぬんだよ。みんなが傷つくのも分かってるけど…今は心を 守るより命を守る事を優先させたいからね」伊月の言葉に違和感を覚えて、剣城は眉を寄せる。心を守るより、命を守る? どういう意味だろう。まるで自分が死なないと誰かが死ぬような物言いではな いか。彼も他の二人同様、仲間殺しの記憶に苦しんで自殺を選んだとばかり思って いたが−−もしや他にも理由があったのだろうか。初めて黒子達に命を救われた件以来、剣城にも人ならざるモノを見たり相手 の魂の形を透かし視ることが出来るようになっていた。恐らく怪異体験で目覚 めた力が黒子の異能に引っ張られたのだろう。洗練されてはいないが、多分か なり視える方だと思う。しかし伊月の隠し事が何なのかは、幾ら覗き視ても分からなかった。辛うじ てうっすらとその背に翼が透かし見える程度だ。伊月が本気で何かを隠そうと しているがゆえだろう。問題はその秘密が分からなければ、自分にはこれ以上どう彼を説得すればい いか分からないという事だ。「真ちゃん…日向さん。…伊月、さん」 悩む剣城の隣で、一歩前に出たのは高尾だ。「俺は…あんな奴に負けたくねぇよ。…あんな奴に俺達の全部、滅茶苦茶にさ れたままとか絶対有り得ない。なあ真ちゃん。このまま終わったら、俺達…負 けだよな」「高尾…」「負けたままでいいのかよ。生きるとか生きないとかそんなんじゃなくて!負 けたまま悔しくないのかってそう訊いてんだよ馬鹿野郎!」まるで小さな子供のように泣きながら、高尾が言った。それを見て今にも泣 き出しそうな顔をしているのが緑間である。まるで叱られた子供みたいだ、なんて。そう年上を表現するのはさすがに失 礼だろうか。「悪いけど、屋敷で起きた事について真ちゃん達の責任だとか思ってる奴一人 もいねぇし。俺も悪かったからそんな事言う資格ねぇし。…俺があの時真ちゃ んに取り憑いた魔女に殺されたりしなきゃって思うとむしろ俺の方が死んじゃ いそうだよ…でも!」 声を張り上げ、そして。高尾は思い切り、緑間に飛びついていた。その勢いに緑間がよろめくが、体 格差もあってかなんとか踏みとどまる。でも。「でも関係ないの!んな事関係ないじゃん!そんなんより、真ちゃんともっと バスケしたいって俺も先輩達もみんなそう思っちゃったんだからどうしろって んだよどうしてくれんだよ!」「たか…お…俺は…」「生きる理由なんてそれでいいじゃん、たったそれだけのことだっていい筈じ ゃんか!頼むよ…っ」 緑間には、涙でぐしゃぐしゃの高尾の顔が間近で見下ろせた筈だ。そして。「俺達の為に生きててよ…っ!」高尾のその言葉が引き金になった。緑間の腕が高尾の体を掻き抱いた。そし て。冷静さを貼り付けたような青年は、声を枯らして−−泣いた。二人分の泣き 声が剣城の胸を締め上げる。安堵や喜びや切なさの影に、ほんの少しの後悔と 嫉妬を携えて。−−俺ももっと前に、兄さんとそうしてれば良かったのかな。男同士だとか兄弟だとか、そんな羞恥心や常識は本音の前にはただ邪魔なだ けだ。ぶつかり合って抱きしめ合うのに友達も兄弟も恋人も関係ないのだから。 すれ違う前に。自分も兄と抱きしめあって、大声で泣いてしまえたら。互い に必要のない傷を負うことも、無かったんだろうか。−−もうそんな事言っても、どうしようもないんだけどさ。パァンッと景気の良い音がして我に帰る剣城。見ればリコが、日向の頬に思 い切り平手打ちを食らわせていた。かなりの勢いだったのだろう、反動で日向 の眼鏡が吹っ飛び、からからとコンクリートの地面を滑ってゆく。「分かってるよね、日向君」 少女の低く押し殺した声が響く。「私が何でこんなにキレてんのか、分かってないとは言わせないわよ…こんの クソキャプテン!」 日向が黙っていた。ただ黙って、リコの怒りを浴びていた。 ***・・・831:名無しのミステリー作家 心配だ…うう心配である832:名無しのミステリー作家 大丈夫かなぁみんな…833:名無しのミステリー作家 おいみんな、あんま雑談でスレ進めんのナシなあと残り少ねぇし834:名無しのミステリー作家 だなだな835:桜 青峰君、一つ訊きたいんですけど昔皆さんで帝光中の屋上に集まって騒いだりとかしてました?836:青 なんだよ急に…まあ、してたけどなまだチームが半ば空中分解する前だ一時期は灰崎のヤローも一緒にいて、八人で集まってたりしたっけなそれがどうかしたかよ837:名無しのミステリー作家 何か気づいたのか桜?838:名無しのミステリー作家 何か分かったのか?839:桜 分かったというほどではないですよただ、帝光中を選んだとしたらそれは伊月さんではなくて緑間君だったでしょ うからその特別な場所を最期に辿り着く場所に選んだのは…まだ彼が過去を捨てきれてないせいだと思って。過去を捨てられないというのはつまり、未練があるということです840:名無しのミステリー作家 …そっかそういう解釈も出来るか841:名無しのミステリー作家 つか俺新潟なうだから無理だけど東京近郊の奴らはみんな帝光に向かったんだよな?報告全然ないんだけどスレ見てないのか?842:名無しのミステリー作家 >>842見る余裕ないんじゃね?行く時は大慌てだっただろうし着いたら着いたで大騒ぎだろうし桜と青峰はどうしてる?843:桜 ……なんでこういう時に限って山手線と京浜東北線が揃って止まるんでしょう信号機トラブルって時間かかるんですよもう…844:青 こっちはで埼京線で足止め食った…やっと新宿だ山手と京浜が死ぬと埼京にトバっと人流れんだよ混みすぎなんだよ畜生!つか埼京線混雑遅延多すぎね!?845:名無しのミステリー作家 >>青 ……間違いないわお客様トラブル率超高いもんな埼京線…846:名無しのミステリー作家 ついでに埼京線は痴漢発生率も第一位だぞ埼京線通勤に使う俺すんげー嫌847:黄 あー青峰っちに桜っち悪いけどもう来なくても大丈夫かも…片づいちゃったッスよ848:名無しのミステリー作家 黄!?849:名無しのミステリー作家 わああああ黄瀬おかえりいいいっ!片付いたってことはハッピーエンド!?850:名無しのミステリー作家 報告ををを!ずっと正座で待ってたからもう足の感覚がねぇんだ…!851:名無しのミステリー作家 >>850それはヤバいwwww852:青 おいどういう事だよ黄瀬!俺の苦労返せ!853:黄 >>青 いやそんな事言われても;;とにかく順を追って説明するッスよ、黒子っちが!854:名無しのミステリー作家 お前じゃないんかいwwww855:名無しのミステリー作家 おいキセリョwwww856:黒 まったく黄瀬君はもう…仕方ないですね今から皆さんにさっきまでのことをお話しします NEXT |
生きて、生きて、生きろ。