ハッピーエンドは 僕等がこの手で迎えに行く。
【キセキファン】 彼らが魔女に浚われた ・最終夜・5 【力を貸して】
「チェックメイトだ。…最後の対決といこうじゃないか…アルルネシア」
赤司がそう宣言した瞬間だった。 まるで硝子が粉々に砕け散るように、周りの景色が弾け飛んだ。瞳を焼きか ねない強い光に、思わず目を瞑り顔を庇う赤司。 目蓋の裏から光が消えた時、赤司はどこか肌寒さを感じて眼を開いた。夏の、 不気味な洋館。その玄関ホールに仲間達といたはずなのに。赤司はその面影が 何一つない場所に、たった一人で佇んでいた。
「此処は…」
一言で言うなら−−教会。 細長い椅子がいくつも並べられ、ステンドグラスが月明かりを反射してキラ キラと光っている。今は夜、であるらしい。青い色に染まった景色はどこか幻 想的で美しくさえある。 しかし。そこが普通の教会でないのは歴然だった。教会の正面、本来ならば 主か聖母が讃えられるべき場所に、我が物顔で鎮座していたのは−−黒い翼を 掲げた悪魔の石像だったのだから。 否。悪魔ではない。不適な笑みを浮かべ、全てを破壊せんと柄の長いハンマ ーを振り上げたその姿は−−。
「素敵でしょ?下僕に創らせてみたの」
かつん、とハイヒールが鳴った。赤司ははっとして振り向く。
「あたしの為の、あたしの偶像。いずれ全ての馬鹿な人間達が、この石像の前 にひれ伏す日が来るんだわ。…今から想像しただけでぞくぞくきちゃう」
その声を実際に聴いたのは初めてだったが。赤司に不快感を抱かせるには充 分だった。多分、可愛らしいとか美しいとか呼ばれる容姿と声なのだろう。一 般基準に照らせばけして醜いものではないのだろう。 しかし今。赤司はこの世で最も汚いものを見る眼で、姿を現した魔女を見て いた。真っ赤なドレスに茶色の髪。つり上がった真っ赤な眼の実に“醜悪な美 女”。間違いない。絵の中の女と、そっくりだ。 「貴様が二ノ宮蘭子ことアルルネシアか」 「そうよぉ、初めまして、になるかしらね?」 女はけたけたと子供じみた、されと大人の甘ったるい毒を過分に含んだ笑み を浮かべて首を傾げる。吐き気がしそうだ。それはこの魔女が自分を、仲間達 の命を弄んだからが理由ではない。 この女からは悪意しか感じとれないからだ。誰かを貶めたい、犯したい、壊 したい、辱めたい、汚したい、踏みにじりたい。苦しむ顔を存分に愉しみたい という、暗く醜い願望しか。人の悪意の塊、悪意から産まれた魔女。なるほど、 こうして目を開わせることさえ不愉快極まりない存在だ。
「幻想法廷。…本来元老院に属さないあたしに借りられる場所ではないのだけ どね。ある方々が特別に場所を提供して下さったのよ。紹介するわ」
アルルネシアがパチンと指を鳴らした瞬間だった。薄暗い青に支配された法 廷に一気に明かりが灯った。 「あらやっと出番?待ちくたびれちゃったわ〜」 「もう退屈すぎてうんざりしていたところよ。ここまでアルルネシアのワンサ イドゲームだとは思わなかったもの」 「またまたぁ、ベルンも随分楽しみにしてたくせにぃ!」 「五月蝿い。耳元であんまり騒がないで頂戴、ラムダ。それと勝手に人の名前 略さないで」 「ちょ!それは私の台詞なんですけどぉ!?」 魔女の石像の隣に、二つの小柄な影があった。甲高い少女の声と大人びた少 女の声。なんだろう、と思うと同時に、赤司は“眼”の力を発動していた。 洋館では力は殆ど使えなかったが、この場所ならば可能だ。魔術師の力の一 つ−−幻視。魂の形を読み取りその真の姿を見透かす力だ。 そして知った、彼女達の正体は。
「さぁて、ご挨拶ご挨拶っと」
淡い色の金髪に、お菓子を飾ったようなフリルのピンクのワンピースを来た 少女。彼女の名は、絶対の魔女ラムダデルタ。甲高い声と高いテンションで話 していた方だ。
「一応初めましてと言っておくわ。まあ奇跡の名を冠する者同士ではあるしね」
もう一人の少女はラムダデルタとは対照的だ。青紫がかった長い黒髪に人形 のような眼のゴシック系ワンピース。何故か黒猫のシッポが生えている彼女は、 奇跡の魔女ベルンカステル。幼い見た目に反し酷く大人びた喋り方をするのが この少女である。 「まあ感謝するのね。一応元老院付きの大魔女である私・奇跡の魔女ベルンカ ステルと。まあ一応は同じ立場にある絶対の魔女ラムダデルタが、わざわざこ の茶番の為に馳せ参じたんだから」 「ええ。ええ。実に感謝してますわお二方!お陰でこんな素敵な舞台まで用意 して頂けたんですもの…ふふふふふっ!」 冷め切ったベルンカステルの言葉に、キンキン声で答えるアルルネシア。赤 司はといえば、さすがにあっけにとられていた。ラムダデルタやベルンカステ ルは、素質はあれどキャリアのない魔術師である赤司でさえ知っているほどの 大魔女だ。元老院に正式に認められ、魔女同盟から数々の権限を得ている、魔 力も権力も申し分ない二人。確かに、アルルネシアとはまた別の残酷さをあわ せ持つ彼女達ではあったが−−。 まさか彼女達ほどの魔女が。魔女としてのルールも世界を渡る航海者として の掟一つ守らないアルルネシアに味方するだなんて。 非常にまずい。仮にアルルネシアを論破できたとしても、ベルンカステルと ラムダデルタを同時に相手出来る魔力が残るとは到底思えない。 一体どうすれば。
「何を考えてるかモロバレだから教えてあげるわ、天命の魔術師・赤司征十郎 君」
ラムダデルタがニヤニヤしながら近付いてくる。 「今回、私とベルンはあくまで観劇者。中立の立場を貫くわ。ただアルルネシ アの仕掛けたこのゲームがあまりに面白そうだから、舞台となるこの場所を貸 し出してあげたに過ぎないの」 「…なるほど。諦めた恋と退屈が、魔女を殺す最大にして最悪の毒だったな」 「その通り〜!よーく分かってるじゃない!」 自分が感情の出にくい質で良かった、と赤司は心底そう思った。でなければ 安堵が伝わり、あらぬ厄介事を招いたかもしれない。ラムダデルタといいベル ンカステルといい、魔女の流儀と掟を守っている分アルルネシアより遙かにマ シではあったが、それでも性格が三回転四捻りして複雑骨折していることに変 わりはない。人間からは程遠いその残酷さも。 中立。ひとまずはその言葉を信じておくことにしよう。しかし油断は禁物。 牙だけは研いでおくべきだ。赤司はそう結論を出した。
「さぁて、ゲスト紹介も終わったことだし?この災禍の魔女・アルルネシアが 支配するゲームの最終決戦を始めましょう!ようこそ幻想法廷へ!」
アルルネシアは大仰な仕草で一礼してみせた。まるでサーカスで踊る道化人 形のように。 「頑張ってね〜赤司クン♪私は中立立場だけど、貴方は私が気に入ってる“あ の子”の友達の友達だから個人的には頑張って欲しいのよね」 「?」 ラムダデルタが意味深なことを言ってひらひらと手を振る。あの子?友達の 友達?一体何のことだろうか。相手が大魔女では、いくら赤司の眼でも全てを 読み取ることはできない。 そしてそんな彼女を、ベルンカステルは相変わらずどこかつまらなそうに見 ている。
「まあいい。…早速、真実の追求に入らせて貰おうか」
今はそれよりも、事件の真相を明らかにしてアルルネシアを倒すのが先決だ。 ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべる魔女に赤司は向き合った。 まず最初の一手は−−。
***
・ ・ ・
791:ねぇあたし、トイレの名無しさん どうしよう…
792:ねぇあたし、トイレの名無しさん ほしゅ! やっぱり赤様もうこの掲示板見てないよな
793:E監督 すまない赤司…俺がもっと早く気づいていれば…!
794:ねぇあたし、トイレの名無しさん E監督のせいじゃないって!
795:ねぇあたし、トイレの名無しさん そうだよ E監督は赤司を助けようと奮闘してくれてんじゃんか!
796:ねぇあたし、トイレの名無しさん むしろ俺自分のが情けない ろくな推理もできないでまったく役に立てないなんて… 憧れのキセキの力になれるって浮かれてたせいだ 本当に悪い…
797:ねぇあたし、トイレの名無しさん 俺だってそうだよ 兄貴の役に立ちたかったよ…
798:ねぇあたし、トイレの名無しさん 今赤司様戦ってるんだよね 応援するしかできないのかな
799:霧 いや…応援だって意味のあることだよ それに以前俺達が巻き込まれた事件のスレを見ててくれた人は知ってると思う けど 誰かを励ましたい応援したいっていうプラスの気持ちは、それだけで悪いもの を祓う力になるんだ
800:ねぇあたし、トイレの名無しさん そういや黒様がそんなこと言ってたような…うう
801:ねぇあたし、トイレの名無しさん 黒子様…(´;ω;`)ぶわっ
802:ねぇあたし、トイレの名無しさん じゃあ俺達がここにいるだけで、少しは役にたててんのかな…
803:ねぇあたし、トイレの名無しさん そうだって信じたいな…
804:ねぇあたし、トイレの名無しさん 自分キセリョへのラブパワーを発信し続けるわ! キセリョー抱いてぇぇぇっ!
805:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>804 阻止
806:騎士K >>804 阻止
807:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>804 阻止
808:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>804 阻止
809:天M >>804 阻止
810:霧 >>804 阻止
811:ねぇあたし、トイレの名無しさん >>804 阻止
812:E監督 >>804 阻止
813:ねぇあたし、トイレの名無しさん wwwwwwwwwwwwww
814:ねぇあたし、トイレの名無しさん プギャー( ^д^ )ww
815:ねぇあたし、トイレの名無しさん 804ざまぁww
816:ねぇあたし、トイレの名無しさん 安定の阻止率とコテハン組の参加率ww
817:804 いいよいいよもう! だったら脳内┏(┏ ^o^)┓ホモォ…で我慢するから!
818:ねぇあたし、トイレの名無しさん まwさwかwのw
819:ねぇあたし、トイレの名無しさん 悪化www804が腐った乙女だった件www
820:ねぇあたし、トイレの名無しさん うわあああキセリョを汚すなああああ森へ帰れえええ!!!!
821:ねぇあたし、トイレの名無しさん おいなんだこれ
822:ねぇあたし、トイレの名無しさん ん?どうした821
823:ねぇあたし、トイレの名無しさん これ見てみろよ!
つ 【動画URL】
これ赤司と…もしかしてアルルネシアじゃないか!?真っ赤なドレス着た女がい る!
824:ねぇあたし、トイレの名無しさん え!?
825:E監督 まさか…アルルネシアが生放送で対戦の様子流してやがるのか…!?
826:ねぇあたし、トイレの名無しさん マジかよおおっ!?
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断罪して捕縛せよ。