失敗をしない決意と。 失敗を恐ることは違うように。
【キセキファン】 彼らが魔女に浚われた ・最終夜・8 【力を貸して】
・ ・ ・
赤司の推理は続く。 黒子、火神、そして緑間。彼ら三人が犯人であるという前提の元に。
「…何故、殺された面々が全員同じように“金のナイフで心臓を一突き”だっ たのか。実はそれにも理由があったんだ」
犯人が殺し方を統一する理由はいくつかある。一つ目はそれが犯人が最も得 意とする方法、ないし一番足が着かない方法だから。二つ目は同一班に見せか けるためにわざと統一する場合。赤司が考えたのは三つ目の可能性だ。 「あのナイフは目立つ。心臓に刺さってて余計に。一目見て誰もが思う、“こ の被害者は今までと同じように殺された、だから死んでいる”と」 「へぇ、そこはスルーしてくるかと思ってた」 発言したのはアルルネシアではなく、ベルンカステルだ。相変わらず死んだ ような冷めた眼で、赤司を見つめている。
「まあ私は気付いてたけど。…心臓にナイフが刺さっててピクリとも動かない 人間の生死って、なかなか疑えないものよね。ましてや前に同じような死者が 出ていて、かつ今回の駒には医者や警察といった専門知識のある人間が一人も いない。身内を殺されて精神不安定になりやすい素人探偵が一人いるだけじゃ ね」
物静かな見た目をしているくせに随分とまあ辛辣に言ってくれる。しかしベ ルンカステルの言はまさに赤司が言いたいことを代弁してくれていた。 黄瀬の死は、皆を攪乱させ正常な判断力を奪う為の布石でもあったのだ。一 番最初に死んだ彼が、ナイフで胸を刺されて死んだ。赤司もすぐその死亡を自 ら確認している。そして仮に瀕死だったとしても−−医者も設備もない状況で 助かるとは到底思えない。 だから無意識に“諦める”。 そして誰もが無意識に、遺体の明確な生死確認を怠りがちになるという状況 が発生したのだ。
「あの殺し方の統一は、遺体の生死を誤認させる為でもあった。実際僕は黒子 の生死を強引に確認しようとはしなかった」
そして。“取り乱した”緑間と死んだフリをしている黒子が二階に取り残さ れる。残った自分達は全員玄関ホールへ。 この時確定している配置図は、玄関ホールに赤司、高尾、青峰、火神、日向、 リコ。 二階に緑間と黒子(死亡したフリ?)。 一階右廊下の応接室に黄瀬(死亡確定)。 行方不明が伊月、紫原となっている。
「《黒子は死亡したフリを続行したまま、用具倉庫前で待機。緑間は☆部屋へ 移動し、伊月先輩の遺体を一階or抜け道から引き上げてきて、☆部屋の隣部 屋へ運び自らも中へ入る。そして内側から鍵をかけて室内のどこかに隠れたん だ!》」
この時二階へ緑間を迎えに行ったのは高尾、青峰、日向。緑間と黒子が二人 だけになってから十五分経っているから、これらの犯行は不可能じゃない。そ もそも二階も二階で物音が響きにくい構造だ。伊月の遺体を引きずっても大し た問題にならなかっただろう。 というか、緑間と伊月には随分体格差もある。伊月はバスケ選手としては赤 司と並んで小柄な方だ。195cmある緑間なら悠々運ぶことが出来たに違いない。
「高尾達は密室と化した隣部屋を破って中で伊月さんの遺体を発見した。その 時部屋が密室だったことを確認して家捜しもしただろうけど、僕自身の眼でそ れを確認したわけじゃないし。多分見落としがあったんだろうね」
そして、伊月の遺体を見つけた高尾と青峰と日向が退室し玄関ホールへ戻る。 この時既に密室は破られている。緑間は自由に伊月の遺体がある隣部屋と廊下 を行き来できたというわけだ。 これならば【伊月俊は他殺である】という赤にも【日、青、鷹の三人が突入 した際、☆部屋の隣部屋は完全な密室だった。窓もドアも内側から鍵がかけら れていた。】という赤にも矛盾せず密室殺人が成り立つのである。 今生き残っていて所在がわかるメンバーは全員玄関ホールに戻ってくる。赤 司、青峰、高尾、日向、リコ、火神の六人だ。
「停電が起きたのは、この後だったわよねぇ」
ラムダデルタがニヤニヤと笑いながら言った。
「ブレーカーを落としたのと、高尾君を殺したのは誰だったのかしら?あ、私 が代わりに宣言しちゃうけど【赤司君が見つけた時高尾君はちゃんと死んでた わよ。ちなみに他殺だからね〜】」
アルルネシアでなくてもゲーム盤の赤を紡げるらしい。赤司はやや驚いたが、 続けた。今赤が増えるのは好都合というものだ。
「《ブレーカーを落としたのは死んだフリをして用具倉庫前に倒れていた黒子 だ。そしてブレーカーを落とした直後に自殺した。緑間はこの時真っ暗になる 前に隣部屋から脱出し、二階の☆部屋かもしくは抜け道を通った先の食堂あた りに身を隠していたんだろう》」
【ブレーカーは犯人自ら手で落とした。】これでこの赤は成立する。 そして。
「《高尾を殺したのは玄関ホールにいた火神!儀式部屋のドアに蛍光塗料がつ いていてそれが高尾の服に付着した件は、既に明示されている。火神はこの塗 料を目印に高尾を刺したんだ!》」
***
・ ・ ・
913:ねぇあたし、トイレの名無しさん なるほど…そういうことか
914:霧 筋は通るんじゃないか? 二階でブレーカーを落とした黒子さん 一階で高尾さんを刺した火神さん 今までの赤にも矛盾せず、自然な流れで犯行は行えたはず
915:E監督 いや待て霧野 赤司の推理…どっかおかしい気がする
916:ねぇあたし、トイレの名無しさん い?
917:ねぇあたし、トイレの名無しさん おかしいって何がですか監督
918:ねぇあたし、トイレの名無しさん 今までの赤き真実にも矛盾しないし ノックス十戒にも抵触しない…よな?
919:ねぇあたし、トイレの名無しさん なんか変なとこあったか?
920:E監督 いやごめん…俺も何が引っかかってるか分からなくて でもなんか、違和感があるんだよな
921:ねぇあたし、トイレの名無しさん む…難しいなおい
922:ねぇあたし、トイレの名無しさん 俺にはさっぱりわからぬ
923:実況班 実況続けるぞ皆の衆! 確か鷹が死んだ後あたりで、赤様もだいぶ弱ってたフシがあるよな E監督に慰められてたあたりだ で、弱ってたのはみんな同じだったから、暫く玄関ホールに待機してた…と
そこで鷹の血をもろに被ったJK監督が顔を洗いたいって言い出して、日主将 と二人キッチンに手を洗いに行ったわけだ これが十時半。でも二人は出て行ったっきり戻らなくて、結局赤様と青峰と火 で探しにいった 正確には痺れ切らした青峰がキッチンのある左廊下エリアに飛び込んでいった のを赤様達が追いかけたってのが正しいな
924:ねぇあたし、トイレの名無しさん おおう、そうだった
925:ねぇあたし、トイレの名無しさん そういやここで一つ議論があったよな 何で日主将とJK監督は二人きりになりたがったのか あとなんで洗面所のある風呂場じゃなくてキッチンに行ったのか
926:ねぇあたし、トイレの名無しさん 二人きりになったのは、まあ、日主将とJK監督が付き合ってるからかも?み たいなこと赤様も言ってたけど
927:ねぇあたし、トイレの名無しさん まあ黒子のとこの学校のカントクとキャプテンだしなぁ
927:天M 理由に関してもなんか議論あった気が… キッチンは左廊下で風呂場は右廊下エリアだから、左廊下エリアで調べたいこ とがあったからじゃないかって言ってなかったっけ
928:ねぇあたし、トイレの名無しさん ほれ、参考までに一階の廊下の地図だ
| | | 応接室|部屋|部屋| −−−− −−− −− −−−− ←玄 | 関 一階 |鉄 ホ 右廊下 扉 ー | ル | −−−−−−−−−−− −−−− |風呂場?|
| | ☆食堂 キッチン| −−−− −−−−− −−−− | 玄→ | 一階 関 窓 左廊下 ホ | − | ル −−−−−−− −−−− −−− 書庫 | 書斎|
929:ねぇあたし、トイレの名無しさん おっつ!
930:ねぇあたし、トイレの名無しさん 助かるわ!
931:実況班 これは赤様も、第一夜の時話したまんまじゃないかって言ってるわ 二人はキッチンと同じく左廊下エリアにある食堂の抜け道を調べに行った可能 性が高い あと、自分達以外の玄関ホールメンバーの中に高尾を殺した人間がいるとみて 警戒してたんじゃないかって
932:指揮者 そういえば、第一夜の段階では赤司さんが探偵であること、犯人でないことが 赤で宣言されてなかったんだよな 日さんとJKさんからすれば、赤様も容疑者の一人にすぎなかったんだろうな … 日さんはなんとしてでもJKさんを守りたかっただろうし
933:ねぇあたし、トイレの名無しさん あー、それは分かるわ 黄瀬がいなくなった時も、JK監督守りたくて日主将はその場に留まってたん だもんな ほんとに付き合ってたのかもしんないし
934:ねぇあたし、トイレの名無しさん だよな 日主将の性格だったら誰を疑ってもJK監督の安全確保を第一にしたかっただ ろうな
935:実況班
赤「多分、そんな日主将とJK監督を、一階に隠れてた緑間は物音でもたてて 書庫に誘い出したんだろう。そして二人一緒に仕留める為に本棚を倒して二人 の動きを封じて殺したんだ」 アルル「随分簡単に言うけど、重い本棚がそう簡単に倒せるかしら?確かに緑 間君は身体も大きくて力もあったでしょうけど、倒れてた本棚は一つじゃない わよ?」 赤「ところが簡単に倒せる仕掛けはしてあったんだ。本棚の一番下の段は何故 か辞書ばかりだった。そして辞書は普通、カバーがかかっているものだ。そし てカバーだけを本棚に入れていても、取り出さない限り判別はつかない。そう だろう?」
936:ねぇあたし、トイレの名無しさん …そうか!
937:騎士K 本棚の一番下には、おそらくカバーだけになった辞書ばかりを入れられていて 軽くなってた 下の段だけ異様に軽い本棚だ、当然バランスも悪い 普通より遥かに倒れやすくなってたってわけだな
938:ねぇあたし、トイレの名無しさん うわ、しっかり伏線張られてたよマジで…!なんで気づかなかった俺!
NEXT
|
諭して悔いよ。