恐れてもいい。 その恐れさえ乗り越えて進めるのなら。
【キセキファン】 彼らが魔女に浚われた ・最終夜・9 【力を貸して】
自らの推理に、不安がないわけではない。しかしここまで来たらもう押し通 るのみ。一気にたたみかけて、勝機を得る。赤司は杖を掲げた。
「青で追撃する!《本棚が倒れやすくなっているフラグは僕自ら立てていたか ら、ノックス十戒第八条違反にはならない。緑間は、本棚を倒しまくって二人 を下敷きにした後殺害。自らはそのまま食堂の抜け道から二階へ戻ったん だ!》」
そして。日向とリコの帰りが遅いことを訝しんだ青峰と赤司と火神が見に行 ったところ。書斎でリコと日向の遺体を発見するに至ったわけである。 この時緑間はまだ死んではいない。二階に潜伏している。
「クローゼットかどこかでボールを見つけていたんだろう。《緑間は玄関ホー ルに戻ってきた僕らがすぐ気付くようにボールを階下に向けて転がし、すぐに そのまま二階☆部屋で自殺したんだ》ボールに関して確かにフラグはないが、 これはトリックは犯人確定に関して重要な要素にならないからね。特にノック ス十戒を気にする必要はない」
アルルネシアは黄瀬、黒子、緑間の他殺という復唱要求を拒否した。つまり この中に最低一人は自殺者がいるという可能性が高い。そして赤司の推理通り ならばそれは黒子と緑間の二人ということである。 この時既に黒子は自殺。緑間も自殺。よって緑間の遺体が突然二階の☆部屋 に出現するということにあいなったわけだ。
「《緑間が自らテーピングを外した理由は。何度も抜け道を通り抜けた結果汚 れた手を隠す為。確かに煤汚れくらい手を洗えばすぐ落ちるがテーピングのテ ープはどうにもならないからな。だから証拠隠滅の為にテープを外して捨てた んだ》」
そして黄瀬の手首についていた手形。あれも抜け道を通った犯人、緑間か黒 子か火神の煤汚れによる手形だったと考えられる。それくらい抜け道は煤汚れ ていたのだ。 これで、第一夜連続殺人の犯人解明は完了。残るは、紫原の行 方と零時に全員が死亡するという謎のみ。 「それで終わりかしら赤司君?第一夜、最初から最後まで消えていた紫原君は どこに行ってしまったの?それに全員が死亡するのは何故?残った火神君が、 あなたと青峰君の二人に刃を向けたってことかしら?」 「違うね。そもそも僕も青峰も警戒しきった状態だった。火神一人で僕ら二人 を一気に殺すのはなかなかハードミッションだったんじゃないかな。だから僕 らが死んだ理由は別にある」 これについてはもう、第三夜が始まる前に気付いている。第一夜の時点で、 答えは赤司自ら見つけていたのに気付けなかったなんて−−屈辱極まりない。
「僕と大輝と高尾の三人は、最初の探索時に外に出て車のあるガレージやテラ ス、地下室を探索している。これは赤でも保証されているね?」
そう、地下室だ。
「そして《地下にあるボイラー室は見つけて、その詳しい状態もスレで報告し ていた。設定温度100℃、圧力が異常に上がっているという状況をね》」
自ら見つけていたのに、その日の零時間際には忘れてしまうだなんて本当に らしくない。答えはこんなにも簡単なことだったのだ。
「《零時に、ボイラーは限界を迎えて爆発したんだ。僕ら三人は爆死ないし焼 死。これが零時に全員必ず死ぬという魔法の正体だよ!》」
文字通り、焔の魔法。幻想の裏側、第一巻のラスト。自分と火神と青峰はア ルルネシアの炎攻撃を受けて焼き殺されたことになっていた。あの幻想描写は まるまる真実へ繋がるヒントになっていたのだ。 自分達は確かに焼け死んでいた。アルルネシアが予め仕掛けておいた、ボイ ラーという罠によって。 そして赤司達にわざとそれらを見つけさせることにより。ノックス十戒第八 条−−提示されない手掛かりによる解決を禁ず、という制約をクリアしてきた のである。 情けないことに、なかなか自分達はそのヒントを拾えずにいたけれど。
「そして…敦の行方。《敦は伊月さん同様一番最初に殺されていた。そして…》」
赤司が杖を振ると、幻想法廷に“それ”は派手な音を立てて落下してきた。 第二夜で日向の遺体が放り込まれていた、あの巨大な西洋鎧だ。証拠品の召 喚、完了。
「《最初から最後まで鎧の中に押し込められていた。なのに僕らはまったく気 付くことが出来なかったんだ》」
一階の左廊下は探した。右廊下も探した。二階は探した。外にいないことは 赤で保証されている。しかし。 自分達は皆が皆失念していた。自分達が何度も集まり会議していた玄関ホー ルを−−殆ど本腰入れて探索していなかったということを。
「反撃させて貰うわよ赤司君!《鎧があることは予め提示されていたかしら? 遺体があっても誰も気付かないというのも不自然な話よね。それに対するヒン トがなければその推理は認められないわよぉ》!」
今までただ赤司の青き真実を避けるばかりだったアルルネシアが、ついに反 撃に出た。魔女がハンマーを振ると、青く鋭い矢が赤司の頭上から降り注いでくる。 少し大人しくしてくれていたかと思えばこれだ。野蛮すぎる。赤司は杖を使 ってなんとか矢を捌く。 これで終わりなはずはない。今の青き真実の内容からすれば次にアルルネシ アが打ち出してくる一手は見えている。 ニヤリ。アルルネシアが嗤うのが見えた。
「【全ての夜、全ての事件はノックス十戒に背かない!】そして【ノックス十 戒第八条・提示されない手掛かりでの解決を禁ず】!!」
はっとした瞬間。真っ赤な二対の剣が、赤司の目の前に迫っていた。これは 通常の防御では、防げない。 だが。
「生憎だったね」
魔術師として覚醒し、皆の想いを背負った赤司にとって−−この程度の攻撃 は意味など成さない。 冷静に赤いシールドを展開させ、身を守った。
「玄関ホールの探索を怠ったのは事実だ。でも《玄関ホールの構造やアンティ ークの種類、配置は一番最初の探索の段階で言及している!そして玄関ホール に水槽からと思われる異臭が漂っていることは、僕をはじめ何人もが発言・示 唆していることだ!》よって【死体が玄関ホールにあっても容易く気付けなか った可能性が高いことは、既に説明済み、ノックス十戒第八条には違反しな い!】」
赤い盾。そして青き真実の矢での反撃。さすがのアルルネシアも反応が遅れ たらしく、弾き飛ばされる。 なるほど、こういうゲームか。赤司は理解する。自分と相手。双方の真実を 戦わせ打ち勝った方の攻撃が通る。これが真実を操る魔術師と魔女の戦い、黄 金のゲーム盤の真骨頂というわけだ。
−−次は第二夜の推理をぶつけてやる…!
第二夜と第三夜。その推理で、トドメを刺してやる。もう火神と黒子と緑間 が犯人だと分かっているのだ。少なくとも第三夜はそれで充分話が通る。なら ば、全ての夜の犯人は全て同じと考えて差し支えないだろう。 赤司が杖を構えた、その時だった。
「アルルネシア。あんたいつまで遊んでる気なの。退屈すぎて欠伸が出るわ」
ベルンカステルが本当につまらなそうな声で言うと同時に。倒れたアルルネ シアが、くすくすと嗤って身を起こした。 おかしい。赤司の頬に冷たい汗が流れる。何故だ。さっきの攻撃は通ったは ずなのに−−何故効いていない? 「余裕で勝てる状況が分かってて、わざと踊ってあげてるのかしら。茶番だわ」 「くすくす…ベルンカステル卿は相変わらず辛辣でらっしゃるわね。性格悪い って言われませんこと?」 「あんたにだけは言われたくないわね」 冷めた様子のベルンカステルに、ニヤニヤしたままのアルルネシア。赤司の 頭の中で警鐘が響く。まさか、自分の推理が間違っている?
「あんたの推理には、致命的な穴があるのよ。私は親切だから教えてあげる」
呆れたような様子で、ラムダデルタが近付いてきた。そして耳打ちされた内 容に−−赤司は眼を見開くことになる。
***
5:名無しのミステリー作家 結局また新スレですよ旦那
6:名無しのミステリー作家 すげぇなこのネタだけでいくつスレ使う気だし ってあ!
7:名無しのミステリー作家 わあああ乙とか言ってる場合じゃなかった!なんか不穏な空気!?
8:名無しのミステリー作家 赤様ピンチ!? え、なんで攻撃がきいてないんだよおおおっ!?
9:E監督 あ! やば、今気付いた!赤司の推理に何で違和感感じたのか!
10:名無しのミステリー作家 え
11:名無しのミステリー作家 マジですかE監督!? なにが変だったんですか!?
12:名無しのミステリー作家 俺には筋が通ってるように見えたぞ!?
13:E監督 赤司の推理だと、不自然…っていうか不可能なところがあるんだよ! もっと早く気付くべきだった…誰か二階の地図持ってこれるか!?
14:名無しのミステリー作家 屋敷の二階の地図か?
15:名無しのミステリー作家 拾ってきました!
| |儀式| | | | ☆部屋|部屋|部屋|部屋|部屋|物置| −− −− − −−− − − | | | | 窓 二階 窓 | | | | −−−−− −−−−−− −−−− 階段 |ダンスホール|
16:名無しのミステリー作家 乙!
17:名無しのミステリー作家 この地図がなんか関係あるのか?
18:E監督 >>17 大アリだよ いいか、まずみんなに確認してもらいたい この地図だと都合上ちょっとズレちゃってるんだけど 階段のある方−−玄関ホールから見える二階の範囲はどこからどこまでだっ た?
19:天M えと 確か儀式部屋のドアのあたりしか見えないって言ってませんでしたっけ
20:名無しのミステリー作家 二階も二階で音が響きにくい構造で 儀式部屋から左右の窓の方へ離れるほど一階から音は聞こえなくなるんだった よな
21:名無しのミステリー作家 うっわよく覚えるなそんな細かいとこ
22:名無しのミステリー作家 俺もぶっちゃけ忘れてた
23:E監督 >>21−22 このあたり忘れてると推理成り立たなくなるぞ(汗) まあ仕方ないけど
いいか、俺がおかしいと感じてるのは月先輩の密室トリックの謎解きなんだ もし赤司が言うように犯人が黒子、火神、緑間だったとしたら そんで三人が赤司の言うような行動をとっていたら 絶対おかしなことが起きてるんだよ
24:名無しのミステリー作家 おかしなことってなんですか
25:名無しのミステリー作家 焦らさないで下さい監督うっ!このイケズ!
26:騎士K …俺分かったかもしれない 赤司さんの推理の矛盾
27:名無しのミステリー作家 まじっ!?
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悔いて壊せよ。