【仲間を】
嘘の儀式を終わらせろ
【助ける】3
 
 
 
 
 
 グラウンドの中心で、赤々と炎が燃えている。
 なんだなんだと集まってくる連中は、校長と理事長が遠ざけたらしい。彼等
も最初はなにやらこれ以上騒ぎにするだのなんだのと喧しく言っていたが、黒
子が交渉しに行った途端パタリと大人しくなった。一体何をしたのやら。神童
は気になったが、ここはスルーしておく方が無難と判断した。
 様々な曰く付きで有名な超次元サッカーである。プレイヤー達は単なる戦闘
能力のみならず、危機察知能力も磨かれるものらしい。スポーツ選手なんだけ
どな一応、とほんの少し遠い眼になる神童である。
 
「なんか…辺りがざわついている気がしませんか?」
 
 天Mこと松風天馬が、不安げに辺りを見回している。
 
「確かにもうそろそろ日が暮れる時間帯ではあるんですけど…それにしたって
空気が重すぎるというか暗すぎるというか。キャプテンは何か感じませんか?」
 
 黒子いわく、天馬は“見えないが気配は察知できる”タイプらしい。残念な
がらというか神童は見えないし気配も分からない(しかし霊感がないせいで今
まで危ない目に遭わずに済んできたということらしい)。よって、天馬が分か
らないことが自分に分かるわけがないと思うのだが−−。
「…視線」
「え?」
「なんかもの凄い数の野次馬に、ジロジロ見られてるような感じがする…」
 口にした途端、天馬の顔から血の気が引いた。分からないゆえか、あるいは
たった今思い当たったせいか。その実彼は結構な怖がりだと、そう知ったのは
つい最近のことである。
 声の類いは、神童には聞こえない。
 しかし今感じている視線は、野次馬−−それも悪意の籠もった興味に満ちた
視線に、極めてよく似ていた。あの子は妾の子なのよ、あらそうなの、とジロ
ジロこちらを見ながら井戸端会議されているような、そんな気分だ。
 後輩には見えているのだろうか。
 サッカー部の中で最も見えているとされる、騎士Kこと剣城の姿を目で追う。
彼は三国の側で、焔をもっと大きくすべく手伝いをしている。ぴょこぴょこ跳
ねるポニーテール。その横顔は心なしか青い。
「彼にも聞こえてるみたいですね」
「うわっ!」
 突然後ろからかけられた声に、神童は飛び上がった。水色髪に同じ色の瞳−
−黒子だった。いつからそこにいたのだろう。影が薄いのがウリだのなんだの
と言っていたが、いくらなんでも気配がなさすぎではないか。
 ここまで来るともはや特殊能力の域である。
 
「すみません驚かせてしまって。…多分剣城君、あてられてものすごく疲れて
ると思います。終わったら休ませてあげて下さいね」
 
 表情の変化に乏しい白い顔をほんの少し歪めて、黒子は校舎を見上げた。
「笑い声がするって言ったでしょう?今もしてるんです。しかも今は笑い声だ
けじゃなくて罵声が混じってる上、どんどん声が大きくなってます。慣れてな
かったらボクも吐いてたかもしれません」
「うわぁ…」
 それはキツい。自分は聞こえなくて良かったと、神童は心の底から思ってし
まった。
 
「そろそろ皆さんに配置につくよう言って下さい。…始めますよ」
 
 いよいよか。神童は頷き、皆に指示を出した。サッカー部のメンバーのうち、
黒子が選んだ十一人(霊力や事件との関わりから選抜したらしい)が焔の周り
を取り囲む。
 時計回りに、天馬、神童、影山、速水、浜野、三国、錦、霧野、狩谷、一乃、
剣城の順だ。始める前に一度やり方は練習させて貰った。少々変則的だが、最
後を任せるのは剣城である。きっと上手くいくだろう。
 
「さて」
 
 皆で囲んだ輪の内側に、黒子は立っていた。その手にはお札を貼った袋。そ
の中には、霧野が集めた“うらみのこし”の台紙がぎっしり詰まっている。
 ナップザックにぎっしり、だ。これがいかに異様なことかは説明するまでも
あるまい。実行したにせよしなかったにせよ、生徒達は興味本位で儀式の台紙
を作成していたのである。
 一人一人の感情は悪意とも呼べないほど小さなものかもしれない。しかしそ
れが寄り集まれば、災厄さえ招きかねない大きな悪意となる。
 他人とあわせる、他人に流されやすく協調性のある日本人だから余計事態は
悪くなってしまったのだろう。良くも悪くも日本人は集団とその心理を好む種
族だ。
 
『降霊術は、素人がそうそう成功するものではありません。しかし時に成功し
て、成仏するはずの霊を縛り付けてしまったり、余計な被害を招くことがざら
にあります』
 
 黒子の言葉を思い出す。少し前まで自分も、幽霊だの妖怪だのをまったく信
じていなかった。だから、ひょっとしたら知らず知らずのうちに不謹慎な真似
をしたり、あるいは興味本位で百物語をしたりと、危ないことをしていたよう
に思う。
 反省しなければならない。今日まで無事だったのは本当に幸運なことだ。
 
『そして素人であればあるほど、何を呼ぶかわかったもんじゃない。どうか皆
さんも気をつけて下さいね』
 
 こっくりさん。ひとりかくれんぼ。百物語。肝試し。
 楽しむのは自由だが、せめてその前に少し考えるなり、調べるなりをすべき
なのだろう。そしてよく考えるべきなのだ。
 時には自分の愚かな行為で、大切な誰かを巻き込むかもしれないのだから。
 
「…“Despel”」
 
 黒子が何かを呟き、ナップザックにを放り投げ−−掌底で思い切り打ち出し
た。ナップザックは焔の中に叩き込まれ、瞬く間に燃え始める。
 
「え!?
 
 神童は目を疑った。橙色の焔に青いものが混じり、次の瞬間大きな火柱とな
って夜空を焦がしたのである。
 
「黒子!大丈夫か!?
 
 輪の外から、円堂監督が叫ぶ。黒子は“大丈夫です!”と叫び返すと、いつ
の間にか手に持っていた二本の剣のようなものを、バトンのようにくるくると
回し始めた。
 その足がステップを踏む。ダンス、というよりもっと和風な−−強いて言う
なら舞のような動きだった。
 
「−−……」
 
 あれは黒子の声なのか。綺麗な歌声が、グラウンドに響き渡ってゆく。何語
かも分からない、しかしどこまでも透き通るような声についつい魅入られてし
まう。
「きゃ、キャプテン…!」
「ああ」
 天馬がひきつった声を上げる。青く染まった焔から何かがゆらゆらと飛び出
し、空に吸い込まれるように消えていったのだ。しかも一つではない。最初に
消えた魂を追うようにしていくつもの光が揺らめきながら舞い上がる。
 それが何か−−なんて。説明されずとも分かってしまった。
 
−−死んだ奴らの…魂が…。
 
 一つ。二つ。三つと続くそれ。きっと九人分の光が飛んでゆくことになるの
だろう。偽の儀式だったはずが、溜まりに溜まった悪意に捕らわれ、命を奪わ
れ、死して尚逃げられなかった魂達。それが黒子の力で一つまた一つと解放さ
れてゆく。
 不意に、袖を引っ張られてつんのめる。目を見開く神童、そのすぐ側に一人
の少年が立っていた。この学校の制服を着ている。いつの間にそこに立ってい
たのか−−そう思った直後、悲鳴を無理矢理飲み込む羽目になる。
 少年の左手と両足はあらぬ方向にねじ曲がり、ぱっくり割れた額からだらだ
らと血を流していたのだから。
 
『ありがとう』
 
 え、と思う。ありがとう?どういうことか。
 戸惑う神童に少年はにこりと微笑み、もう一度、ありがとう、と言った。
 少年の身体が光に包まれる。すると無惨だった身体がみるみる修復され、生
前の綺麗な姿を取り戻していく。神童は気付いた。少年の顔に見覚えがあった
のだ。生前直接顔を合わせる機会はなかったけれど、写真では見ている。
 一番最初に、いじめられていた彼だ。
 
『ありがとう。たすけてくれて』
 
 やがて少年の身体もまた、光の塊となり、空へ上っていく。神童は唖然とし
たままその姿を見送った。
 優しい子だったのだと知る。無惨に死してなお、あんな風に微笑えるくらい
には。
 
「…俺はまだ何も出来てないよ」
 
 神童はぎゅっと拳を握りしめる。
 
「俺達の仕事は、ここからだ」
 
 悪意に満ちた数多の声が耳を貫いたのは、その瞬間だった。
 
 
 
 ***
 
 
 
182:名無しさん、みぃ〜つけた
指揮者達大丈夫かな
 
189:名無しさん、みぃ〜つけた
大丈夫だろ、黒がついてんだぞ
 
190:名無しさん、みぃ〜つけた
>>189
おま!様をつけろ様を!
 
191:名無しさん、みぃ〜つけた
>>189
偉大な黒様に対しなんとご無礼を!
 
192:名無しさん、みぃ〜つけた
>>189
今すぐ土下座!土下座するんだあああっ!
 
193:名無しさん、みぃ〜つけた
>>189フルボッコwww
 
194:名無しさん、みぃ〜つけた
いつの間にかスレが黒様信者で埋まってる件www
 
195:>>891さん、みぃ〜つけた
すんませんっしたああああ!
orz===========3ズザザザザザザッ!
 
196:名無しさん、みぃ〜つけた
なんて見事なスライディング土下座www
 
197:名無しさん、みぃ〜つけた
よし、そろそろみんな本題だぞ!
黒様親衛隊の我らの力を見せる時ぞ!
 
198:名無しさん、みぃ〜つけた
指揮者タソprprな俺も加勢します!
 
199:名無しさん、みぃ〜つけた
キセリョファンの私見参!
 
200:名無しさん、みぃ〜つけた
天馬タソと騎士Kタソにhshsしてる俺が通ります
 
201:名無しさん、みぃ〜つけた 
kskの世代ファンクラブ会長がここにぃぃぃ!(バッ
 
202:名無しさん、みぃ〜つけた
今は変態さえ頼もしいぜ!
くろちゃんオカ版常連の腕が鳴らぁ!
指揮者あああ!黒おおえ!がんばれえええっ!
 
203:名無しさん、みぃ〜つけた
黄!絶対に負けるな、死ぬなああ!
 
204:名無しさん、みぃ〜つけた
人間そんな捨てたもんじゃないぞ、今日俺ら初めて会ったかもだけど
でも、今はみんながお前らの仲間だ!友達だ!
 
205:名無しさん、みぃ〜つけた
お前らはぼっちな俺らに勇気をくれた!本当にありがとう!
 
206:名無しさん、みぃ〜つけた
…泣けるぜおまいら
みんないい奴らだな…
 
207:名無しさん、みぃ〜つけた
>>206
はげどう
 
208:名無しさん、みぃ〜つけた
俺だからくろちゃんが好きなんだ
画面ごしの連帯感がたまらんぜ!
 
天Mうううっ!俺がチュチュするまで死ぬなあああ!
 
209:名無しさん、みぃ〜つけた
>>208
おまwwせっかくカッコイいこと言ってたのに台無しww
阻止
 
210:名無しさん、みぃ〜つけた
>>208
断固阻止
 
負けるなあああみんなあああっ!!
 
 
 
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それでも何かを見つめるの。