されぬ
 
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イナズマジャパンに選ばれる前と後はおれにとっては楽しいことも
たくさんあったけど……
辛いことも同じぐらいあったんだ……
町を歩けばひそひそ声や人を小馬鹿にしたような笑み
まぁそれだけならまだいい……
いきなり路地裏に引きずり込まれて罵声を浴びせられたこともあった
「この宇宙人やろう!!」
「学校破壊壊しやがって!!」
「よくのうのうと歩いてられるな!!」
といくつも罵声を浴びせられたこともあれば
同じく路地裏に引きずり込まれて殴られたこともあった
「どうしたリュウジ怪我してるじゃないか」
施設に帰ると仲間たちが心配してくれる仲間もいたけど
「……」
冷たい視線を送ってくる仲間たちもいたんだ
仕方ないよねっだっておれはチームのキャプテンだったんだから
責任はおれにもあるんだから
パタンと部屋の扉を閉めてズルズルと扉の前に座り込む
部屋の中は電気をつけず月明かりだけが部屋を明るくした
そして目の前には……大好きなサッカーボールが転がっていた
でもそのボールはところどころ傷がついていた
あの頃はサッカーが大好きだったのに
今はそのサッカーのせいでおれはこんな目に合ってるんだ
だからこそ自分手で刃物で傷をつけてボロボロにしたのだから
おれは立ち上がりボールを取ると奥の棚に押し込み扉を閉めた
 
次の日急な用事で外に出ることになった
というかいつも買い出しとかはおれがやる
それがせめてもの償いだみんなが傷つかないように
「おいっあいつ」
ほーら、まただ
「ちっよくノコノコと歩いてられるな」
「ちょっと現実を叩きつけてやるか」
けどそれはいきなりだった
ガンッと頭に衝撃が走った
そして視界が真っ暗になった
次に目を覚ましたときには見知らぬ倉庫にいた
頭がくらくらしていた、ていうかあいつらよくもあんな往来のど真ん
中で殴りやがって
「おっ目覚めたか宇宙人やろう」
「……」
そうかおれあいつらに捕まったんだ……ていうかこいつらどっからど
うみても高校生じゃないのか?
「おまえよくおれたちの学校壊したなっ」
「はっあんたら高校生だろっ」
「おれたちは卒業生だったんだよっ」
あーそういうことか……母校を破壊されたってことか……
それでよくもまあ暴力沙汰になるようなことを……と言ってる場合で
もないか
「それでおれになんのようだ」
「なんのようだと」
相手の怒りに触れてしまったのだろう
ドカッと殴られた
「あんなことやってよくノコノコ町を歩けるな」
何度も何度も殴られ、蹴られた
「おまえは大事なものを壊したんだぞっ」
ドクンっとした
「それなのにこのやろう!!」
ドカドカとどんどんと痛みは広がっていく
怪我は増えていくが心の傷もどんどん増えていった
はじめて……人が怖いと思った
いままでだったら……ただの八つ当たりだろ思っていた
おれだって辛いのにでも絶えるしかなかった
それで耐えていればいつか終わると思っていたから
でもこの人たちは、思いをぶつけているんだ
怒りと憎しみを当然の相手にぶつけているんだ
「聞いてるのかこいつ」
ゴンッとさっき殴られものを取り出してきて殴りだした
それは教科書のつまったカバンだ
けっこう痛いものだ
「ぐっ」
「やっと声あげやがった」
「もっとやれ」
ドスッドスッガスガス
人の思いというのはこんなに怖いんだ
恐怖で思わず
「もうやめて……ください」
ゲホゲホと咳をしながら言う
「はっ何言ってるんだ」
「やめるわけないだろうこのやろう!!」
「いっうっあっ」
殴られるたび蹴られるたび怒鳴られるたびに背筋が凍る
「やめてください……お願い……します」
「うっせい!!やめないって言ってんだろ」
胸倉を掴まれて再度殴られた
顔を見るとその顔は怒りに満ちている顔だった
 
数時間後
おれは床に倒れていた
どうやら途中で気を失ってしまったらしい
「っ……痛い」
痛くて起き上がれずしばらく横になったまま考え事をしていた
そしてゾクッとしてしばらくその場から動けなかった
やっと動けて外に出たら外は真っ暗になっていた
施設に帰ったらどうしようかなっと思った
髪はほどけてるし、服はボロボロ、顔は腫れて唇が切れて血が出てい
そこらじゅう傷だらけになっていた
「はぁ〜……」
とため息をつきながらとぼとぼ歩いて帰った
 
ガラガラとおそるおそる扉を開けると
「リュウジ!!何時だと思ってるんだ!!」
目の前には怒り顔でたつ砂木沼さんがいて
後ろにはみんなが顔を覗かせていた
「ご・ごめんなさい」
扉の影に隠れながら謝る
「とりあえず早く中に入れ」
「えっと……ちょっと外で頭冷やしてきま「いいから!!」
とグイッと中に引きずり込まれて
『なっ!!』
みなおれの姿を見て驚いた
「リュウジどうしたのその怪我」
「えっとたいしたことないよっ」
ヘラヘラしていると
「そんなわけないだろう!!」
ディアムがおれの目の前に立ち怒鳴った
「そんな怪我して……たいしたことないわけないよっ」
マキュアさんも心配そうに言う
「……」
おれは黙ったままうつむいていると
「どうせまたエイリアンのやつだとか言われて殴られたんだろう」
一人奥にいた子が声を出した
「そうだよっ当然だよっ心配するだけ時間の無駄だよ」
と次々とそんな声が聞こえてきて
おれはうつむいて下唇を噛んだ
「静かにしろ!!」
砂木沼さんの声が響いてみな静まり返った
「リュウジとにかくこっちに来い、みんなはもう部屋に戻ってろ」
砂木沼さんがおれの手を取り奥の部屋に連れていき、みんなはしぶし
ぶ部屋に戻って行った
手当てをしてもらっている間もおれは無言のままだった
「これで終りだ」
最後にペタリとバンソウコを貼ってもらった
「ありがとうございます」
「いやっ……なにがあったんだ?」
救急箱をしまいながら聞いてくるが
「……」
絶対に言わない言いたくない
「……リュウジ」
砂木沼さんはおれに目線を合わせた
「怖かったろ」
「えっ」
「顔に書いてあるぞっ、怖い目にあったと」
「……怖かった……です」
ボソッとつぶやいてしまったらもう次から次に言葉が出る
「こんなのはじめてです……殴られたり蹴られたり罵声を浴びせられ
るなんていつものことなのに」
腕で体をきつく抱きしめる
「人の思いがこんなに怖いなんて思いませんでした……」
ガチガチと歯が震える
自分の過去や記憶を消せたらいったいどんなにいいだろう……
でもそれはきっとやってはいけないのだ
それをやってしまったら自分は本当の意味で人ではなくなってしまう
「別に怪我をすることはなんとも思わないんです……暴力だって怖く
ないんです
でも……言葉が怖いんです、罵声じゃなくて言葉が」
怪我は手当てをすれば治る、罵声なんて気にしないで耳を塞げばいい
でも言葉は心に残る罵声と同じようで同じでない
一人一人の思いというものは怖い
だからこそ
「もう大丈夫だぞっ」
と頭を撫でられてしまった
そしたらもう
「ふぇっ」
もう我慢できなくなり泣くしかなかった
あの日から……レーゼになった日から泣かないと決めたのに
たとえどんな目にあったとしても泣かないと決めたのに
涙はとめどなく溢れていく
「怖かったです……本当に怖かったよぉ〜」
全部嘘だった
全部が怖かったんだ
殴られるたびに蹴られるたびに泣きそうになった
でも大丈夫と言うしかなかった
だっておれはキャプテンだもん
全部の責任はおれにあるんだから……
だからどんなに自分が傷ついてもかまわない
仲間たちからの冷たい視線だって仕方がない
ぶつける相手はおれで正しいんだ
けどもう我慢できない
「おれっおれ怖いんです、なにもかもが怖くて仕方ないんです」
砂木沼さんは黙って聞いてくれていた
誰にももう嫌われたくないからだから笑うしかなかったんだ
自分が傷つけばいつかみんなが許してくれる日が来ると思った
絶えることは簡単だったエイリアン時代のことに比べたら
みんなに嫌われるくらいならなんだって絶えられる
自然と自分を傷ついていたんだ
町に出てさぁ自分の罪を晴らしてくれと
傷だらけで帰ってくればいつかみんなが許してくれて
全て元通りになると思っていたんだ
そんなことあるわけないとわかっていたのに
今日わかった……思いというものはこんなにも強いものなのだ
きっとあの高校生たちだって自分のことを二度と許してはくれないだ
ろうな
だから自分の罪というものも二度と消えないのだ
たくさんのかけがえのないものをなくした
もう取り戻すことは諦めるしかないのだろうか
おれは泣いて泣いて自分の心の中で自分を傷つけた
自分を罵って罵ってそしてまた傷ついて
そしてそのまま泣き疲れて眠ってしまった
次の日……なぜかベットにはおれのあの傷つけたボールが置かれてい
それがなんの意味をなしているのはこの頃のおれにはわからなかった
けどおれはそっとそのボールの傷を指でなぞった……
 
 
 
END
 
 

 

この贖いは、何時になれば終わるのか。

 

BGM Final heaven
 by Hajime Sumeragi

 

 

風雅クウ様から相互記念でいただきましたー!「リュウジ中心で暗シリアス・怖い目に遭うリュウジの話」です。

…これを読めばもう語るまでもないですが…リュウジスキーさんは風雅様のサイト、見ないと損です。

風雅様のリュウジの可愛さってば殺人級ですからね!治さんと絡ませてもヒロト君と絡ませても美味しいですよう。

今回、相変わらず難しい&自重しないリク内容だったにも関わらず…世宇子中出身者はやって下さいましたですよ。

エイリア事件でなんだかんだで一番有名(悪い意味で)なっちゃったのは緑ちゃんですからね…ガチでこんな事ありそうで怖いです。

クウ様、本当にありがとうございました!!そしてまた勝手に自作BGMつけてすみませ…(土下座)