好転、暗転。 エイリア学園の崩壊。いや、もともとエイリア学園などというものはなかった。全ては"お父様"が作りだしたもの。そして、創造主が居なくなってしまった今、その配下に下っていた者たちが路頭に迷うのは当然のことである。今は皆、日だまり園に居るがそこに昔の面影はない。暗く沈む者たちがたくさん居た。以前はトップ5と呼ばれた五人も名残からか部屋を一つとり会議をしているが、その五人にも活気は見られなかった。「…駄目、だと思うんです」「レーゼ?」長い沈黙が続いていたが、それを破ったのは意外にも緑川だった。四人の注目を浴びつつも緑川ははっきりとした声音で続ける。「私、いや俺たちは上に立っていた責任がある」「責任って言ったって…何が出来るんだい?」「それは分からない」「なら、」「でもっ!!…俺は仲間が、家族がずっと悲しんでいるところを…見たくない」そう吐き捨てた緑川は席を立ち部屋を飛び出していった。慌てて砂木沼が後を追う様子を横目で捉えつつ、残された三人は顔を見合わせた。「…俺も行こうかなあ」「グラン…?」「はっ、お前もかよ」「そうは言うけど、君たちだってこっそり行こうとしてるでしょ?」にっこり、と擬音がつきそうな笑みを浮かべたヒロトに南雲は居心地悪そうに身体を揺らした。南雲とて、悲しみに暮れている仲間(家族)をただ見ているのは歯痒い。そんな南雲の様子を横目で見ていた涼野は低い声で唸った。「だが、何が出来る」「、ガゼル?」「グラン、君に何が出来るというんだ。お父様のように力があるわけでもない。」「そうだね、俺がみんなの生活を支援したり望むもの全てを与えたりなんて出来ないよ」あっさりと肯定したヒロトにこればかりは南雲も眉をひそめた。涼野に至っては失望を混じえた視線を送っている。「でも、例え一時でもいいから、俺はみんなに笑って欲しいんだよ…サッカーでもしてさ」「サッカーだと!!?私が何故今このような状態にあるか分かっているのか!!」珍しく怒りを露わにし席を立った涼野を南雲が片手で制した。思わず口を噤んだ涼野だったが納得はいかないらしい。それは南雲も同意見だった。「あいつ…円堂守のように何でもサッカーで解決ってわけかよ」「ちょっと違うけど、そんな感じかな」「…はっ、下らねえ。そんな単純な奴らじゃねえだろ。そんなことで笑うことは…」「何でそう思うのさ?」「何でって…」「俺はサッカー大好きだよ、ボールに触れているだけで楽しい。それに、今度のサッカーは人を傷つけるものじゃない」ヒロトの目に剣呑さが宿った。最後の言葉に重みを感じる。命令じゃなく、誰かのためでなく、自分のためにサッカーをする。長年忘れていたその感情を、ヒロトはまだ持っていた。「それに、この考えは俺だけじゃないみたいだしね」「「…?」」「よく耳を澄ましてよ、外から聞こえるから」しん、と静まり返った部屋に反響したものは微かな声援と愉快そうに笑う声だった。やけに聞き覚えがあるそれは、紛れもない。「レー…いや、緑川か。彼じゃないかな、外でサッカーしてるの」「…結局サッカー、かよ。どこもかしこもそればっかだな」呆れたように呟く南雲の表情を一瞥したヒロトはくすくすと笑みを零しながら席を立った。そのまま二人に背を向け部屋をあとにする。かと思えばひょっこりと顔だけ出した。「みんなと待ってるからね。晴矢、風介。」手を振り今度こそその場を後にした。些か居心地の悪い雰囲気のまま残された南雲はちらりと涼野を見た。予想に反して涼野は南雲を真っ向から見つめておりどうにも視線が外せなくなる。「…行きたいなら行けばいい」「…意地張るなよ」「意地など張っていない!!」頑なに主張する涼野に南雲は大きくため息をついた。もとより気位の高い奴ではあったが、ここまでだったとは。元々気の短い南雲は席を立った。そのまま扉へと向かう。制止の声は、ない。「…我々にはもはや力がない」「…」制止の声はかからなかったがやけに引っかかる言葉を吐いた涼野に南雲の足も止まった。「力をなくした今、前のように楽しめると思うか」「…勝つことが全てじゃねえだろ」「違うっ、勝つことこそが全てだ!!」ぐっと拳を握り締め力説する涼野に違和感を覚えた。勝つことに固執する姿勢はガゼルであったころから変わらない。しかし何か、決定的な何かが違う。「風介、お前おかしいぞ」「おかしくなどない」「もう力の…エイリア石の呪縛から放たれたはずだろ」「…石はまだ存在する」唐突に吐き出された言葉には面を食らった。涼野は立ち上がりつかつかと南雲の傍まで来ると痛いほどの力で手を掴んだ。痛みに顔を歪める南雲の表情など、涼野の目には映っていない。「あの人と一緒に行けば、私はまた力を手に入れられるんだ」「ッ…?」「私と来い、晴矢…!!」外で、風が吹いた。ざわめく木々たちの隙間から怪しい光が零れる。天から落ちたものではないそれは、地の底へ落ちる光のように見えた。「晴矢ー、風介ー、まだ意地張って……あれ…?」光が止んだころ、強情な二人を呼んでくるよう頼まれた基山が部屋に入ったがそこはもぬけの空だった。「風介…晴矢…?」持っていたボールが手をすり抜け、音を立てて転がった。部屋にやけに響いた。言い知れぬ不安を覚えたヒロトの予感が的中することを、彼はまだ知らない。それを知らせるかのように木々のざわめきがより一層、静かな室内に響いた。Fin. |
追い詰められて、プレリュード。
BGM 『夢の終わり』
by Hajime Sumeragi
昌澪様からキリリクでいただきましたー!「エイリアキャプテンズでCPなしシリアス」です。
この方の闇堕ち連載は凄いのです。一目惚れして、調子こいてリンク張ってキリリクまでさせて頂いたのですが…。
…感服。何かを変えなくちゃ、と心のどこかでみんなが思ってる。でも選ぶ道は、一つじゃない。
一番最初に闇の深淵を覗き込んだリュウジだからこそ、最初に立ち上がることが出来たのかもしれないですね…うるる。
そんな彼らの心理描写を見事描ききって下さいました!勝手につけた自作BGMでブチ壊しにしてなければいいのですががが。
昌澪様、本当にありがとうございました!!